第六十二話 赤と黒から黄へその六
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教わっていてだ、竹千代はこんなことを言った。
「和上はとても」
「優しいでおじゃるな」
「はい」
彦五郎と共に一休みしている中で述べた。
「これ以上はないまでに」
「和上はそうした方でおじゃる」
「とても優しい方ですね」
「そうでおじゃる、そして」
彦五郎は竹千代におやつである柿を差し出しつつさらに話した。
「教え上手でおじゃる」
「そうもありますね」
「だからでおじゃる」
「何から何まで頭に入り」
「わかるでおじゃるな」
「全く以て」
「しかしでおじゃる」
ここで彦五郎は竹千代に言った。
「お主はでおじゃる」
「それがしはですか」
「その中でもでおじゃる」
今雪斎に教わっている者達の中でもというのだ。
「図抜けているでおじゃるな」
「そうでしょうか」
「お主和上に教えて頂いたことを屋敷で自分でも学んでいるでおじゃるな」
「はい、それは」
「そうでおじゃるな」
「どうも一度教えて頂いたことをです」
それをというのだ。
「さらにです」
「読んで、でおじゃるか」
「もう一度です」
「頭に入れるでおじゃるか」
「そうせねばと思い」
それでというのだ。
「殿が書を読みたいと言えば貸して頂けるので」
「父上は懐の広い方でおじゃる」
彦五郎は父である義元のことも話した。
「だからでおじゃる」
「書の様な大事なものもですか」
「貸してくれるでおじゃる」
「そして読ませて頂けるのですね」
「お主は実際に読んでいるでおじゃるな」
「はい」
「それで、おじゃるな」
彦五郎はしみじみとした口調で述べた。
「よく覚えているでおじゃるな、字もでおじゃるな」
「屋敷でです」
そこにいると、というのだ。
「武芸の鍛錬と共に」
「書いているでおじゃるか」
「筆と硯を出して」
墨も用意してというのだ。
「そのうえで」
「励んでいるでおじゃるな」
「それ故にでしょうか」
「間違いないでおじゃるな、麿はどうにもでおじゃる」
彦五郎は自分のことも話した。
「自分の好きなことはでおじゃる」
「蹴鞠、和歌、政のことは」
「励むでおじゃるが」
それでもというのだ。
「武芸は剣術は好きでおじゃるが」
「それでもですか」
「好き嫌いがあるでおじゃる」
「彦五郎様はそこが問題ですな」
雪斎もそのことを指摘した。
「政をお好きなのはいいことです」
「今川の次の主としてでおじゃるな」
「和歌や剣術も。ですが」
「兵法と馬術を好かぬことは」
「それはよくありませぬ」
こう謹言するのだった、今川の次の主に。
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