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戦国異伝供書
第六十二話 赤と黒から黄へその四

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「尚更将来が楽しみでおじゃる」
「全くですな」
 雪斎も義元の言葉に笑顔で頷いた。
 そしてだ、彼もまた竹千代に顔を向けて彼に言った。
「竹千代、ではこれからはじゃ」
「和上がですか」
「そなたの師となってな」
 優しい目と表情での言葉だった。
「そのうえでな」
「文武のことをですか」
「拙僧の知っていることを全てじゃ」
 それこそというのだ。
「殿にそうさせて頂いた様にな」
「授けて下さいますか」
「字は書けよう」
「少しですが」
「ではそれもよくじゃ」
 学問の第一歩であるそれもというのだ。
「授けよう」
「そうして頂けますか」
「是非な、武芸も兵法もな」
 そうしたものもというのだ。
「教える、ただじゃ」
「ただとは」
「拙僧は厳しいぞ」
 温か味のある顔での言葉だった。
「それでもよいか」
「ははは、和上驚かせては駄目でおじゃる」
 義元は竹千代に話す雪斎に笑って話した。
「和上程優しい御仁はおらんでおじゃる」
「そうでしょうか」
「戦の場に出ても無駄な殺生はせず戦自体も」
 それもというのだ。
「出来るだけ避けようとし政も仁愛を念頭に置いているでおじゃるな」
「法は何故あるか」
「弱き民を護ってでおじゃるな」
「国を保つ為です」
 その為にあるからだというのだ。
「法を定め」
 そうしてというのだ。
「刑罰もです」
「出来る限りでおじゃるな」
「穏やかなものとして」
 その様にしてというのだ。
「民を護る様にしています」
「そうでおじゃるな」
「しかしそれは当然のことであり」
「政を行う者として」
「拙僧は厳しいでずぞ」
「いやいや、麿に何でも懇切丁寧に教えてくれて」
 義元は彼がまだ出家していて都の寺にいて雪斎から何かと教わっていたその時のことを思い出しつつ話した。
「怒鳴ったことも声を荒くしたこともないでおじゃる」
「出家し修行中の身なら当然のこと」
「そう言うでおじゃるか」
「はい、そして竹千代にはです」
「厳しくでおじゃるか」
「教えていきまする」
「竹千代、安心するでおじゃる」
 義元はあくまで自分は厳しいと言う雪斎に代わって竹千代に話した。
「和上はそう言うが」
「その実はですか」
「とても優しくて丁寧にでおじゃる」
「それがしをですね」
「教え授けるでおじゃる」
 そうするというのだ。
「だからでおじゃる」
「これからはですか」
「学び鍛えるでおじゃる」
 学問そして武芸によってというのだ。
「よいでおじゃるな」
「それでは」
「そしてお主達も」
 ここで義元は家臣達の中に新たに入った黄色い服と冠の一団を見た、皆三河から竹千代についてきた松平家の家臣達だ。
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