暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン17 錬金武者対赤髪の夜叉
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「んで?鼓、お前一体何しに来たんだ?」

 デュエルが終了してから、わずか10分。敗北したチンピラ2人が這う這うの体で逃げ帰り、見せもんじゃねえぞと睨みを効かせて野次馬を追い払い。経営危機を脱したケーキ屋のおばさんからせめてものお礼にうちのケーキでもとの誘いを受け、それじゃまあと誘われるがままに店内に入り、ずらりと並べられた甘味を前にして糸巻が口火を切るまでの時間である。清明は厨房の方に消えていったため、店内はさながら小規模な女子会の場と化していた。
 1つの国を統括するフランス支部代表と、激戦区とはいえ日本の小さな町担当。同じデュエルポリスとはいえ今の立場には天と地ほどに大きな隔たりがあるものの、プロ時代から長い付き合いのある2人の前にそんな地位の違いなど存在しない。いつもの煙草の代わりにイチゴを突き刺したフォークをびしっと赤髪の美女が向けると、指された銀髪の美女もこれまた単刀直入に、マカロン片手に答えを返す。

「何を言っている、糸巻。本部に今年はデュエリストフェスティバルするから人員寄越せとのたまったのはお前の方だろう。あの摘発の件もあって働きづめだったから、有休も余ってたことだしな。リフレッシュがてら故郷、日本の土でも踏んで来いとのお達しだ」
「えぇっ!?」

 当然だろうと言わんばかりの返答にすっとんきょうな声を上げたのは、ちゃっかり糸巻の隣の席を確保して生クリームのかけらを頬に付けた八卦である。当然その場にいた全員の視線が向けられたことに気づいてやや赤面しつつも、それでも驚愕の方が勝りおずおずと続ける。

「え、えっと、鼓さん……ですよね」
「ああ。そういう君は?」

 ぶっきらぼうな言葉ではあるが、そこに刺々しさや拒絶は感じられない。気さくで荒っぽい糸巻とは対照的なようで、どこか人を引き付ける魅力という点では根が同じものを持つ。それが、鼓千輪という女である。
 だからだろうか。不思議と少女の口からは、すんなりと言葉が出た。

「申し遅れました!私、八卦九々乃と申します。まだまだ半人前の身、及ばずながら糸巻お姉様の元で、一人前のデュエリストになるため精進させて頂いております!」
「ひとつ補足すると、七宝寺の爺さんの姪っ子だな。若いのに大した子だぜ」
「七宝寺さんか、懐かしい名前だな。よろしく……いや待った。糸巻お姉様?糸巻、お前まーた女の子引っかけたのか」
「うるせえ」
「ま、また?」

 理知的で整った眉を細めて意味ありげなジト目を送る鼓に、露骨に顔をしかめる糸巻。しかしそれで済まないのが、すぐ隣の少女だった。

「えっと、お姉様?どういう意味かお聞きしてもよろしいでしょうか」
「それには私が答えよう、八卦ちゃんとやら。そこの女は昔から行く先々でとにかく女性受けが良くて、そのくせ鈍感なものだから
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