第三章
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「アッラーは全て解いて下さる」
「人に叡智を授けて下さる」
「全くですね」
「アッラーの偉大さは」
まさにとだ、シードはこうも言った。
「その寛容さにもある」
「はい、それ故に」
「寛容にな」
「人に無限の叡智を授けて下さいますね」
「学ぶこともな」
このこと自体もというのだ。
「アッラーは大いに認めておられる」
「これだけ偉大な方はおられないですね」
「全くだ」
二人でこうした話もしてだった、そのうえで共に夜にピラミッドの方に着く様に駱駝に乗って出発した。
そして夜月明かりの下でピラミッドの入り口のところに行くとだった。
そこに髭を生やして赤い派手な服とターバンの中年男がいた、セルジュクはその彼を見てシードに言った。
「何かですよ」
「派手好きの男にしか見えないな」
「そうですよね」
「そうとしかな」
「しかし話によると」
「あの御仁がな」
「ジンなので」
噂によると、とだ。セルジュクはシードに話した。
「聞いてみましょう」
「そうしようか」
シードはその人間にしか見えない者を見つつセルジュクと共に彼のところに行った、見れば彼は一人で干した羊肉や果物と共にワインを飲んでいるが。
二人が自分のところに来たのを見てこう言ってきた。
「あんた達もやるかい?」
「それは貴殿のものだが」
「喜捨ってことでな」
イスラムのこの教えから言うのだった、男はシードに笑って答えた。
「どうだい?」
「それもいいがまず貴殿に聞きたい」
「俺にかい」
「貴殿はジンと聞いたが」
「そうだよ」
その通りだとだ、彼はシードにあっさりと答えた。
「俺はスレイマーン大王のところにもいたな」
「ジンか」
「そうさ、最近ここで夜に乾杯するのが気に入っていてな」
「毎晩か」
「飲んで食ってるんだよ、アッラーに謝罪して」
酒を飲むことをというのだ。
「そうしてるんだよ」
「そうなのか、それでだが」
ここでシードは自らジンと認めた男にさらに尋ねた。セルジュクもまさにという顔だった。
「貴殿の髪の毛はどうなっている」
「ターバンの中のか?」
「そうだ、どうなっている」
「どうなっているってこんな風だけれどな」
こう言ってだった、ジンは自分の真紅のターバンを取ってみせた。するとそれは真っ赤な立った髪の毛だった。
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