第一章
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ジンの髪の毛
カイロの古い話である。
カイロで織物商をしている若者ハールーン=セルジュクにはある疑問があった、それは彼の商売でも言えのことでもなかった。
商売は繁盛していてそしてこの前妻を迎えて幸せに暮らしている、もっと裕福になって相手がいれば二人目の妻もと考えている。
子供も出来ていい使用人と顧客それに取引相手に恵まれている、彼はこうしたことにはアッラーに感謝していた。
では何に疑問を抱いているか、彼は知り合いのイスラムの法学者であるサダム=シードに対して尋ねた。
セルジュクはシードの家に彼の好物であるナツメヤシを持って行って二人でそれを食べつつ彼に尋ねた。
「ジンはいますよね」
「コーランに書いてあるだろう」
シードはセルジュクに答えた、彼のまだ髭は生えていないが細面で端整なその顔を。対する彼は四角くいかつい顔をしていて見事な口髭がある。その顔でセルジュクに答えた。
「ジンの話が幾つもな」
「コーランに書かれているのなら」
「真実だ」
それならばというのだ。
「コーランに書かれていることに嘘偽りはない」
「全て真実ですね」
「そうだ、だからだ」
「ジンはいますね」
「その通りだ」
「それはわかっています」
セルジュクにしてもというのだ。
「ジンがこの世にいることは」
「そうだな」
「私もムスリムですからね」
それ故にというのだ。
「コーランは絶対ということは」
「わかっているな」
「あの書こそが最高の真実です」
「その通りだ、だが」
それでもとだ、シードは言うのだった。
「今日君がここに来たのは何故だ」
「はい、そのジンのことで」
「ジンがいることは事実としてか」
「問題はその髪の毛です」
「髪の毛?」
「人間には髪の毛がありますね」
ここでセルジュクは自分の頭に巻いているターバンに手をやった、その中に髪の毛があるのはシードも同じだ。
「中には薄くなってきている人もいますが」
「わしは大丈夫だぞ」
シードはこのことはムキになって話した。
「言っておくが」
「いえ、それはまあ」
「いいか」
「はい、先生の髪の毛のことは」
「ならいいがな」
「そういうことで、とにかくです」
セルジュクはシードにさらに話した。
「人には髪の毛があって」
「ジンもか」
「ジンはよく髪の毛の殆どを剃って」
「先をだな」
「モンゴルの方の遊牧民みたいにしていますね」
「辮髪だな」
「私等は基本切らないですが」
これは髭もだ、だからターバンで巻いていて髭も生やしているのだ。
「それでもジンは剃って」
「ああいう風にまとめているな」
「ジンはああですか?ジンには髪の毛はないんですか」
「剃ってか」
「そういうも
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