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カチューシャロケット
第一章

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                カチューシャロケット
 ソ連軍はドイツ軍に攻められ文字通り崩壊した、そしてソビエト社会主義共和国連邦という国家自体が滅亡の瀬戸際に陥った。
 かろうじて首都モスクワでの攻防は凌いだ、しかしドイツ軍が有利である状況は変わらず損害は増えていく一方だった。
 この状況言葉を正しく使えば惨状にはソ連軍でとりわけ名を知られた指揮官であるゲルギー=ジューコフ元帥も厳めしい顔で言うばかりだった。
「少しでも戦場に投入する戦力を怠るとだ」
「再び総崩れになりますね」
「そうなる」
 ジューコフは戦場の地図を見つつ参謀の一人に答えた、地図の上にはソ連軍とドイツ軍の部隊がそれぞれ駒となって置かれている。
 だが報告が上がる度にソ連軍の部隊を表す駒が地図の上からどけられていっている、ジューコフもその状況を見て言った。
「今ですらこうだ」
「舞台を投入すればするだけですね」
「全滅していっていますね」
「戦死者も増える一方です」
「損害は果たして何処まで増えるか」
「それでも戦力の投入を怠れば」
「戦線は間違いなく崩壊します」
「人民は片っ端から動員してだ」
 ソ連軍は実際にそうしていた、中学生でも女性でもとにかく動員して戦場に送っていた。銃も碌に行き渡っておらず戦死者の銃をそのまま使わせる状況だった。
 だがそれでも動員して投入しなければならない、それでジューコフも言うのだ。
「投入する、兵器もだ」
「それは同じですね」
「アメリカから山の様に送られてきています」
「それも使いますし」
「後方の工場で製造した兵器もですね」
「製造した傍から投入しますね」
「戦車も大砲も航空機もだ」
 とかく兵器も全てというのだ。
「同志スターリンも言っておられるな」
「はい、塗装もいい」
「試験運転も」
「完成すればそのまま戦場に送る」
「モスクワ戦でそうした様に」
「そうしていきますね」
「兵器は少しでも多く必要だからな、特に戦車のT−34とだ」
 ソ連軍が開発したこの戦車と、というのだ。
「あれは特に多く製造していってだ」
「戦場に送りますね」
「T−34とカチューシャロケットは」
「特にそうしていきますね」
「これからも」
「そうだ、この二つは特に多く製造してだ」
 そうしてというのだ。
「戦場に送っていく、いいな」
「わかりました」
「ではT−34をさらに増産しましょう」
「そしてカチューシャロケットも」
「そうして戦場に送りましょう」
 参謀達も応えた、そしてだった。
 実際にソ連軍は持てる工業力を兵器に集中させてそのうえで兵器を製造していった。その中でも特にだった。
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