第一章
[2]次話
六人分
八条分教会、神戸市長田区にある天理教のこの教会は今は教会長である夫婦と三人の娘それに教会に住み込みの信者さんの女の人と合わせて六人家族だ。
だが長女の千里がだった。
この度奈良県の天理教の高等学校への入学が決まった、それで千里は合格発表の後で一緒に合格を観に来ていた両親に合格発表があった高校の正門のところで言った。
「私四月からは」
「ああ、この学校に通うからな」
「寮に入ってね」
「そうよね、そうなるから」
それでとだ、千里は両親に話した。小柄で背は一五〇位だ。やや癖のある黒髪をショートヘアにしていて色白の顔に垂れ目と八重歯が目立つ童顔がある。声は所謂アニメ声で全体的に非常に可愛らしい感じだ。
その千里がだ、今通っている中学校の制服の一つの姿のまま言うのだった。テストを受けに一旦高校に来て合格発表の日にまた神戸から来たのだ。
それでだ、合格となって今言うのだ。
「少なくとも高校にいる間はね」
「家にいないな」
「夏休みや冬休みの時は別だけれど」
「基本はな」
「寮だからこっちよね」
「そうね。おぢばにいるのは」
千里は天理教の人の天理市の呼び名を出した、天理教の教えで天理市は世界がはじまった場所とされていてそこをおぢばと呼ぶのだ。
「慣れてるけれど」
「おぢばがえりとかでいつもだからな」
「詰所では毎年みたいにお泊りしてるしね」
「おぢばがえり以外でも帰ってきているしな」
「もうおぢばについてはね」
「慣れてるけれど」
それでもとだ、千里は自分の親達に話した。
「何ヶ月も。学校がある時はいつもおぢばにいるのは」
「はじめてだしな」
「お家にいないこともね」
「その間大丈夫かしら」
家そして家族と離れて暮らしてとだ、千里は不安に満ちた声で話した。
「本当に」
「最初は辛いだろうな」
「ホームシックになってね」
両親は千里を慰める様に応えた、周りでは合格不合格で悲喜こもごもの状況となっている。受験の常の風景だった。
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