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余所者
第二章

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「私はいらなかった」
「最初からですか」
「婚姻を結ばれることもなかった」
「マリア=テレジア様が皇帝となられ」
「それで、ですか」
「終わっていた、だが妻は女で夫が必要だった」
 その時のハプスブルク家の直系に男がおらずだ、マリア=テレジアの兄弟には妹が一人いるだけだ。
「それで私が夫となったが」
「それだけで、ですか」
「それ以外ではない」
「そうだというのですね」
「そうだ、だからだ」
 それでというのだ。
「話はここにいるが」
「オーストリアの方ではなく」
「ハプスブルク家の方ではない」
「余所者ですか」
「そうなのですか」
「そうだ、だが私は自分が何かわかっている」
 ここで皇帝はこうも言った。
「自分が出来ることと出来ないこともな」
「左様ですか」
「お出来になれることとそうでないことも」
「おわかりですか」
「妻は内政も外交も出来る」
 政治力を備えているというのだ。
「人の上に立つ、まさにハプスブルク家の主に相応しい」
「それは確かに」
「あの方はまさに女帝です」
「俗に言われますがまさにです」
「ハプスブルク家、オーストリアを治めておられます」
「あらゆることに関して」
「そうだ、妻はだ」
 まさにというのだ。
「天性の君主だ」
「政治のことはあらゆることで、ですね」
「通じておられますね」
「若し男であられたら戦場にも出られています」
「そうして戦っておられました」
「そうだ、しかしその妻に対して」
 皇帝は特に感情を見せず淡々とさえして話した。
「朕は特にだ」
「ですが陛下もです」
「財政については見事ですが」
「こと内政については」
「戦争の後で国債を発行した時もです」
 周りはこのことを話した。
「保証人になられています」
「それは陛下が財政をよく理解されているからです」
「ご領地の財政を建て直されましたし」
「内政も成功されています」
「そしてこの宮殿に植物園や動物園を開かれています」
 皇帝はこうしたこともしたのだ。
「虫の標本や鉱石や芸術品を集められ」
「それをハプスブルク家の財産にもされています」
「確かによくないことを言い行う者もいましたが」
「ですが陛下も」
「ご自身が言われる様な」
「だが私が出来るのはそれ位でだ」
 あくまでというのだ。
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