暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【下】
二十九 怒りの引き金
[1/6]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
しゅるる…と長い舌先を伸ばす大蛇。
大蛇丸に宙吊りにされた鬼童丸を、左近は崩壊する橋の上から見上げた。

大蛇丸、そして彼の背後に控えているカブトを、警戒心を露わに睨み据える。
かつての上司であり、主だった大蛇丸。

彼に逆らうことは、昔は死を意味していた。
だが、今は────。


恐怖に染まっていた左近の眼の色が変わる。瞳が決意の色へ変化したかつての部下を、大蛇丸は興味深そうに見下ろした。
蛇に締め上げられ、鬼童丸の大蜘蛛がぼふんっと白煙と化す。

その煙が舞い上がった瞬間を狙って、左近はクナイを投げつけた。

大蜘蛛の白煙で視界が遮られた大蛇丸は、煙を切って投擲されたクナイを、軽く首を傾げて避ける。
カブトも容易にかわし、クナイは背後の木の幹に突き刺さった。

「かわいい抵抗ね」

ふ、と口角を吊り上げた大蛇丸の髪が、次の瞬間、後ろの爆風で煽られた。

「…っ、大蛇丸様!!」

ただのクナイではなく、起爆札つきだったと気づいたカブトが注意を呼び掛ける。
途端、大蛇丸に足首をつかまれ、気絶していたはずの鬼童丸がぐっと上体を起こした。
手から糸を発射する。

蜘蛛の糸が顔面にかかりそうになり、反射的に大蛇丸は鬼童丸の足首から手を放した。
蜘蛛の糸がカブトの足にくっついたのを視界の端で認めながら、鬼童丸は大蛇から落下する。
墜落してきた鬼童丸を、真下の左近が上手く受け止めた。


「一旦、退くぜよ…!」
「わぁってる!!」

目配せした左近と鬼童丸は、即座に向こうの橋の大木で倒れている右近の許へ駆けだす。
橋の三分の二は完全に崩れている為、向こう側へ跳躍することはできない。真下は崖だ。

状況を素早く判断した鬼童丸は橋の向こうに渡るにあたって、手首から糸を放出した。蜘蛛の糸は右近が背にしている大木の枝にしっかりと張り付く。鬼童丸特有の強靭な糸を使い、左近と鬼童丸は、上手く橋の向こう側へと渡った。

大蛇丸の大蛇の尻尾に吹き飛ばされ、呻いている右近。
向こう側へ渡るや否や、右近の許へ駆け寄った左近はすぐさま身体を融合させる。

ひとつの身体に戻った左近と右近、そして鬼童丸が深く生い茂った森の奥へ入ってゆくのを、大蛇丸は大蛇の上から悠々と眺めていた。

「鬼ごっこでもするつもり?」

口許に冷笑を湛えた大蛇丸の視線が、崩壊する橋へ緩やかに向けられた。
辛うじて三分の一のまま、橋として保てているその場所には、大蛇丸と敵対する木ノ葉の忍びがいる。

大蛇に吹き飛ばされた右近に衝突され、気絶したナル。彼女を介抱しているシカマル。
そして崩壊する橋をなんとか支えようと木遁を使うヤマト。

木ノ葉の忍びを順番に眺める大蛇丸の背中に、カブトが急かすように話しかけた。

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ