二十九 怒りの引き金
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しゅるる…と長い舌先を伸ばす大蛇。
大蛇丸に宙吊りにされた鬼童丸を、左近は崩壊する橋の上から見上げた。
大蛇丸、そして彼の背後に控えているカブトを、警戒心を露わに睨み据える。
かつての上司であり、主だった大蛇丸。
彼に逆らうことは、昔は死を意味していた。
だが、今は────。
恐怖に染まっていた左近の眼の色が変わる。瞳が決意の色へ変化したかつての部下を、大蛇丸は興味深そうに見下ろした。
蛇に締め上げられ、鬼童丸の大蜘蛛がぼふんっと白煙と化す。
その煙が舞い上がった瞬間を狙って、左近はクナイを投げつけた。
大蜘蛛の白煙で視界が遮られた大蛇丸は、煙を切って投擲されたクナイを、軽く首を傾げて避ける。
カブトも容易にかわし、クナイは背後の木の幹に突き刺さった。
「かわいい抵抗ね」
ふ、と口角を吊り上げた大蛇丸の髪が、次の瞬間、後ろの爆風で煽られた。
「…っ、大蛇丸様!!」
ただのクナイではなく、起爆札つきだったと気づいたカブトが注意を呼び掛ける。
途端、大蛇丸に足首をつかまれ、気絶していたはずの鬼童丸がぐっと上体を起こした。
手から糸を発射する。
蜘蛛の糸が顔面にかかりそうになり、反射的に大蛇丸は鬼童丸の足首から手を放した。
蜘蛛の糸がカブトの足にくっついたのを視界の端で認めながら、鬼童丸は大蛇から落下する。
墜落してきた鬼童丸を、真下の左近が上手く受け止めた。
「一旦、退くぜよ…!」
「わぁってる!!」
目配せした左近と鬼童丸は、即座に向こうの橋の大木で倒れている右近の許へ駆けだす。
橋の三分の二は完全に崩れている為、向こう側へ跳躍することはできない。真下は崖だ。
状況を素早く判断した鬼童丸は橋の向こうに渡るにあたって、手首から糸を放出した。蜘蛛の糸は右近が背にしている大木の枝にしっかりと張り付く。鬼童丸特有の強靭な糸を使い、左近と鬼童丸は、上手く橋の向こう側へと渡った。
大蛇丸の大蛇の尻尾に吹き飛ばされ、呻いている右近。
向こう側へ渡るや否や、右近の許へ駆け寄った左近はすぐさま身体を融合させる。
ひとつの身体に戻った左近と右近、そして鬼童丸が深く生い茂った森の奥へ入ってゆくのを、大蛇丸は大蛇の上から悠々と眺めていた。
「鬼ごっこでもするつもり?」
口許に冷笑を湛えた大蛇丸の視線が、崩壊する橋へ緩やかに向けられた。
辛うじて三分の一のまま、橋として保てているその場所には、大蛇丸と敵対する木ノ葉の忍びがいる。
大蛇に吹き飛ばされた右近に衝突され、気絶したナル。彼女を介抱しているシカマル。
そして崩壊する橋をなんとか支えようと木遁を使うヤマト。
木ノ葉の忍びを順番に眺める大蛇丸の背中に、カブトが急かすように話しかけた。
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