第一部
訓練開始
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「全員整列!」
その声は実戦訓練用スペースの入口に立っている女性から放たれた。
髪も靴もジャージも赤一色。
「今年一年間、訓練の教官を務めることになった《斬崎美鈴/きりさきみすず》だ」
威圧感で真面目な彼女は話を続ける。
「毎年のように一年の『ひよっ子』どもには言ってやっているのだが、先ずは自分が『子供』という気持ちを捨てて、一人の『戦士』になったと自覚しろ」
厳しい言葉に生徒が強張った。
「貴様等も覚えているだろうが、7年前に邪神《ナイアー=ラトテップ》は討伐された。しかし新たな脅威も生まれている」
《朱衝義人》と【マジェスティックセブン】の犠牲によって上位存在との決着はもたらされたのだが『あれ』が発生してしまう。
「日本の【無明都市】は新たな【魔神】によって【聖域】になっているが他の国にはまだ残ったままになっている」
学生魔術師の使命は無明都市の解放。
大人は【魔獣領域】などに対応して手が回らないので都市の解放は学生が担当する。
義人によって幾つもの問題が解決しているが無明都市だけはどうにもならなかった。
その彼ももう居ない。
「都市の解放と人命の救助。学生魔術師にとって最も大事なことはそれだ。【天覧武踊】は普段の成果を出す場に過ぎんと理解しておけ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「訓練に入る。外装を」
生徒は各々の【魔晄外装】を出す。
《立華紫闇》は自身に白銀の魔晄を装う。
右手に赤い[装紋陣]が浮かび、輝く魔晄の粒子が右腕に絡み付いていく。
光は肘まで覆う灰色の外殻となった。
「右腕だけをカバーする籠手か?」
「あの外装おかしい」
「見たこと無いタイプ」
「あの外装型かよ……」
「天文学的に低い確率で生まれる?」
「実在したんだ」
紫闇の外装は『規格外』と呼ばれている。
但し良い意味ではない。
「最低のゴミタイプでよくもまあ」
「どうやって魔術学園に……?」
「図太さや鈍さは認めよう」
そう、紫闇の外装は欠陥品。
15年の人生を振り返る。
誰も彼も紫闇を認めない。
だがここからは違うのだ。
(俺は特別な存在。この世界の主人公)
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