怪盗乱麻と女城主の対面
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【その突き当りを左へ。次の階段を上に、その踊り場で──】
「15秒待機、だよね」
スズのナビゲートによって、わたしは初めて入るバトルシャトーを迷うことなく進み、階段の途中で一旦止まる。
バトルシャトーの中は、置かれたポケモンの像も扉に描かれたシャトレーヌの絵も、今にも動き出しそうなくらいリアルで細かかった。照明もだいぶ穏やかな気がする。
ポケモンバトルが行われる場所なのに傷一つついていないのは手入れを怠っていないことと、このリゾートの守り神のおかげなんだろう。
「レイ、進んでもいい?」
レイの姿は今普段の煙突型でもなく飛んでくるときの絨毯型でもなく、体のほとんどはボールの中に戻ってほんの六つだけが出てきてる。
わたしの四方に散らばって、人が近づいてきたら、あるいは進む先に人がいれば手元の二つが点滅して教えてくれる仕組み。一つ一つはほんの数センチの生き物であるツンデツンデだからこそできる芸当だ。
青く光ってOKサインをしてくれるレイにうなづいて、わたしは階段を再び上る。
もう侵入して15分くらい歩いただろうか。ようやく最上階までたどり着き、今まさにシャトレーヌの部屋の目の前だった。人に見られないよう注意しながら進むのは、結構気を遣う。
【この扉を開ければ、中にシャトレーヌがいるはずです。準備はいいですか?】
「……うん」
そのままドアに触れようとすると、手元のレイが赤く光って×サイン。そのままわたしの指先にくっついた。どうしたんだろうとそちらに目をやってようやく、指が震えているのを意識する。
「ありがとう、レイ。怪盗がぜーはーいいながら入ってきたら、格好つかないもんね」
青く光った相棒を指先で撫でて、その場でゆっくりと深呼吸。……うん、落ち着いた。
改めて、丁寧にノックをする。今日の目的はあくまで予告状を渡すことと相手に話を聞くこと。何より人のプライベートルームに勝手に入るのは万死に値する。怪盗が何言ってんだと思われるかもしれないけど、盗むときは予告状を出しているのでノーカウントだ。
「あら……どなたかしら?」
帰ってきたのは、猫がのどを鳴らすような落ち着いた女の人の声。この人がシャトレーヌなのだろう。
「わたしはアローラの『怪盗乱麻』。このリゾート地に招いてくれた貴女へ、直々に予告状を出しにきたわ」
ちょっと声が上ずったかもしれないけど、気にしてられない。とにかくいつも通り、冷静に怪盗としてふるまうことだけ考える。
「まあ、噂は聞いてたけど……本当に、律儀な子なのね。ええ、ええ。入ってきてくださいな」
扉に手をかけると、中身は自動ドアになっているのか力を入れていないのにゆっくりと開かれていった。
(この人が、シャトレーヌ……バトルリゾ
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