第二十一章
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「今はそうよ」
「残念ですね、では貴女の気が変わることを願っています」
「そこでそう言うのね」
「はい、それでは」
「またお会いしましょう」
「すぐに」
速水は最後まで好意的な笑みであった、そのうえで紗耶香を見送った。紗耶香は速水と神父に笑顔で手を振ってだった。
彼女の行くべき行きたい場所に足を向けた、速水は紗耶香の姿が完全に見えなくなるまで見送ったが。
紗耶香が見えなくなってからまだ名残惜しそうだったが司教に対してこう提案した。
「さて、ではです」
「全てが終わったので」
「バチカンにですね」
「戻りますか」
「そうしましょう、そして」
さらにと言うのだった。
「美味しいものを食べますか」
「ローマのですね」
「そうです、ローマも美味しいお店が多いですね」
「神に仕える者は清貧であれ」
司教は速水にこの言葉で答えた。
「そう言います」
「そうですか」
「ですがイタリアにおいては」
「食事は忘れてはならないですね」
「私も美味しいお店を知っています」
このことは事実だというのだ。
「幾つか」
「やはりそうですか」
「はい、ですから」
「よいお店にですね」
「案内させて頂きます」
こう速水に答えた。
「味も量も満足して頂けるかと」
「それは何よりですね」
「主の血もいいので」
ワインもというのだ。
「そちらもご期待下さい」
「それでは」
「では報酬は口座に振り込ませてもらって」
「そしてですね」
「そのうえで、です」
そのうえでというのだ。
「お店の方に」
「では」
「これからローマに戻りましょう」
司教は速水に笑顔で話した、そうしてだった。
速水はその司教と共に聖堂を後にした、邪悪な存在も苦しむ魂達も消え去った聖堂は日を浴びてその姿を見せていた、主のいなくなったそこには寂しさだけがあった。速水はもう振り返ることなく聖堂の門を潜って外に出る時に一輪の花を美声になった美女達の供養の為に置いた。それは奇麗な紫の菫だった。それを供養として置いて全てを終えた。
占術師速水丈太郎 死の神父 完
2019・10・23
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