第一部
三十六計逃げるに如かず
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午後6時。
雑多に高層ビルが建ち並ぶ正に大都会の繁華街は人がごった返し盛況な賑わいを見せる。
ここは日本に八ヶ所を数える[魔術学園領域]の一つであり【関東領域】と呼ぶ。
住んでいる人間の半数が【魔術師】
領域は軍が管理している。
学生魔術師は鍛練に励み、年中開催しているバトルイベント[天覧武踊]に勤しむ。
魔術学園は一つの領域内に複数在るが、それらのお膝元は何処も退屈とは縁遠い。
それを証明するかの如く、《立華紫闇/たちばなしあん》の前では一人の女子が何人もの男子生徒に囲まれていた。
制服からすると、関東領域に在る魔術学園の一つ【刻名館学園/こくめいかんがくえん】
質の悪い輩が多いことで有名。
行き交う人々は厄介事に巻き込まれたくないのか無視を決め込んでいるようだ。
(仕方ない。俺が何とかするか。今は『あいつ』が居ないわけだしな)
紫闇が男子の集団に声を掛ける。
「嫌がってる女の子にしつこいぜ?」
「何だお前、文句あんのか?」
一人が銀色の膜、【魔晄】の防壁に身を包むと彼の前に赤い幾何学模様が現れた。
それに右手を突っ込み引き抜く。
肩に担いだのは深緑色の棍棒である。
他の男子も次々と得物を現した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
彼等が手に持っているのは【魔晄外装】と言われるもので、魔術学園に入る前の魔術師でも大半は持つ専用の固有武器なのだが何処から出てくるのかは不明。
「ちょ、いきなり外装は無しだろ!? 素人がそんなもんでやられたら死んじゃう!」
「ビビりがしゃしゃんな」
「こいつダッセェわ」
馬鹿にしてくる連中を横目に紫闇は女子にアイコンタクトを送った。
彼は男子の気を引く為に近付いたのだ。
女子は合図に気付き走って逃げる。
(うっし、これで良い)
「引っ掛かったなお前ら! 周りの人達をよく見てみろよ。『狩人』に通報してるぜ?」
「てめぇ!」
「ブッ殺してやらぁ!」
紫闇は彼等に耳を貸さず綺麗なターンを行うと背中を見せて人混みに駆け込む。
「はあっ!?」
「嘘だろオイ!」
「あんだけ煽っといて……?」
「打つのは逃げの一手かよ!!」
刻名館の男子達が慌てふためいた。
「バーカ! お前等みたいなのに付き合ってられるわけねーだろうが!」
人並みを走って避けて逃げ回る。
しかしこの帰宅ラッシュ時では全力疾走していれば誰かにぶつかってもしょうがない。
90才近そうな老人と孫娘と思わしき驚くような美少女の二人が歩
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