第四部五将家の戦争
第七十二話 龍塞の裏で糸を紡ぐ
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いたという事は、僕の事を調べていたという事だ。なるほど彼は取り込む気で本腰を入れてきたという事か。
愛想よく礼を言い、喜んで見せながら父へ書く手紙の中身を葵は考え始めていた。
同日同刻 龍上国天竜自治領 人間居住地域 避難所事務局庁舎(小屋)
龍州軍 戦務主任参謀 草浪道往中佐
会議が終わり、残ったのは将校が二人だ。護州軍司令部附きとなった豊地大佐と龍州軍の戦務主任参謀である草浪中佐。
双方ともに護州軍屈指の切れ者である、次代護州公である定康とこの二人が訪れた時点で守原家として名実共に被災者支援に本腰を入れている、と喧伝している。
「悪かったな、貴様まで連れ出すことになって、龍州軍司令部は今が一番大変だろう」
「えぇ驚きました、その最中に振られて作った案が、これほどの規模の作戦になるとは」
草浪が解明した軍の再建と並行して描いた皇龍道を牽制する策は動員数もさして多くはなく、その効果も限定的であった――定康はそれを更に動員兵数を増やし、駒州軍、西州軍、背州軍らの動きとすり合わせて戦略目標を変更したのである――豊地大佐が率いる幕僚部によって、であるが。
そしてそれは定康や豊地が草浪以上の構想力を持っていることを示すわけではない――もちろん豊地とて切れ者であるが、別の話だ。
「それなりの考えがあっての事だ、博打ではあるがよほど大崩れをしない限りは守原に損はない。
政治的にも軍としても博打に見えるが、貴様の原案の堅実さを可能な限り、残している、安全策の為に準備をこうして行っている」
「‥‥‥護州軍の物資からこの避難集落に融通し、そのやり取りを導術で行う、天龍は増加した導術連絡を一々チェックはしない、いやできるかもしれないが政府の連絡を覗くことは道義上の問題で“しない事になっている。”まぁ面倒な事だが外務と内務が絡んでいる以上、利用するのなら代価が必要だ、“避難民の噂話”や“天龍の噂話”のな」
要するに避難民がここで手に入れた物資を伏背ヶ原周辺の村落に売り飛ばす――この手の商売は必ず出てくる――そして天龍が導術やら何やらで見知った情報、そういった諸々を護州軍が買い取るという事だ。
「私では難しい準備ですね」
――そういう事だ。作戦指導者がどの程度の政治的熱意を持って取り組むかが問題だ。とりわけ軍の参謀としてではなく“五将家重臣”として諮問を受けた際には――これまでの4半世紀、小規模な内乱の鎮圧と匪賊退治しか行っていない〈皇国〉軍ではその垣根は曖昧模糊としていたのだが――その見極めが必要である。
「あぁそうだな、俺も驚いている。」
豊地とて定康から“軍を丸ごと動かすくらいの気持ちでやれ”とまで言われたからこそ、であった。そうでなければ草浪の案をこまごま護州軍の実態に合わせて調整
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