犯行はバカンスの後で?
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「騙された!」
楽しい船旅を終え、到着したリゾート地。
結論から言えば、わたしがのんびりとした休暇を楽しめたのは予約していたホテルの部屋に入るまでだった。
リゾートにがっかりした、というわけじゃない。海はアローラのそれとは違う綺麗なエメラルドグリーンだし、島の中心にあるバトルシャトーはとても大きくて、かつ凝った装飾が施されていて眺めるだけでも楽しい。
まるで宝石が島になったみたい……船から降りてここに来るまでは胸を躍らせていた。なのに、なのに。
【どうしましたラディ。せっかく楽しいバカンスに来たのにそんな大声を出して。いくら個室とはいえ不釣り合いですよ】
「スズ、正直に言って。わたしに楽しいバカンスなんて最初からさせる気なかったでしょう!!こんな宣伝まで勝手に出しておいて!!」
スマートフォンから聞こえる半笑いの声がとても憎たらしい。休暇を奪った、いやそんなものは幻想だったと告げるように部屋に用意されたパンフレットを指さす。
旅行者に向けて、建物の説明や、近日行われるイベントなどが書かれたなんてことのないパンフレットだ。『アローラの怪盗が、ホウエンの秘宝を盗みに現れる!』『それを迎え撃つバトルシャトレーヌ達の戦法とは!』と堂々と書かれていること以外は。
【これはリゾート側が作ったものであってスズが出したわけではないのですが】
「屁理屈言わない!ちゃんとした説明しないと帰るよ!」
十ページ以上はあるパンフレットを作るのは一日二日ではできるものではないだろうことは想像がつく。つまりわたしが怪盗としてやってくることを向こうは前提にしていたということ。ならあのスズの説明は最初から嘘だったのだ。
旅行、休暇と言っておいてあんまりな詐欺だ。怪盗がいうのもなんだけど。
【スズは楽しんでくださいとは言いましたが怪盗の仕事がないなんて一言も言っていませんよ? 一週間の滞在のうち盗みに入るのは一夜。六日間は休暇です。どこかの怪盗なんてバカンスに夢中で予告状を出したこと自体忘れていた例もあるほどで──】
「スズ!」
机にバン!と手を当てる。スズが性悪で人を食ったような態度なのはいつものことだけど、さすがに今回は度が過ぎる。
「……わかりました。実のところ、アローラで本当のことは言えなかったんですよ。……出来るだけ内密に、とシャトレーヌからの要望でしたからね。アローラにいる間にラディから情報が漏れてしまうのは避けたかったんですよ」
「それなら、喋らないように言ってくれればよかったよね?」
わたしは口の堅い方だ。人に軽率に話してほしくない事情はわたしにだってあるし、それくらいは弁えてるのに……
「ラディが自発的に口外するとは思っていませんよ?ただ、あなたの周りには良くも悪くも目ざとい人が
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