暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝供書
第六十一話 一騎打ちその四

[8]前話 [2]次話
「遂に長尾殿が動いたわ」
「長尾殿も出陣されたのですか」
「この戦の場に」
「ご自身もうって出られましたか」
「総大将自ら干戈を交えるのは戦の常道でない」
 強い声での言葉だった。
「それはな、だが」
「長尾殿にはですか」
「その常道が通じない」
「そうした方だというのですか」
「これまでを見るのじゃ」
 謙信のそれをというのだ。
「長尾殿はそうした御仁であろう」
「そう言われますと」
「確かに」
「常では言えませぬ」
「そうした方です」
「だからじゃ」 
 それでというのだ。
「わしも今言うのじゃ」
「左様ですか」
「そう言われると我等もです」
「長尾殿のこれまでを見ていますと」
「どうにも」
「あの御仁はじゃ」
 まさにというのだ。
「戦を知っているからこそな」
「常道に囚われぬ」
「兵法についても」
「そうした方だからですか」
「この度も」
「源次郎達の奮戦と援軍が来たことで我等は助かった」
 軍勢自体はというのだ。
「それはな、しかしじゃ」
「それでもですか」
「長尾殿は」
「それでもですか」
「そこで終わる御仁ではない」
 到底というのだ。
「だからな」
「これからもですか」
「仕掛けて来られる」
「我等の思いも寄らぬ方法で」
「そうだと言われますか」
「そうじゃ」
 その通りだというのだ。
「だからわしも言うのじゃ」
「左様ですか」
「だからこそですか」
「我等にも言われますか」
「油断するなと」
「そうじゃ、このことはじゃ」
 まさにとだ、信玄はここで言った。
「今は何よりも大事じゃ」
「この戦では」
「左様ですか」
「だからですか」
「我等もですか」
「油断するでない、そしてじゃ」 
 信玄はさらに話した。
「わし自身もじゃ」
「お館様もですか」
「そうされていますか」
「油断されていない」
「左様ですか」
「そうじゃ」
 信玄の返事場変わらなかった。
「この場でな」
「山の様日ですな」
「動かれませぬな」
「そうされますな」
「山は時として何よりも強い」
 信玄は己の兵達にこうも話した。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ