第七章
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「思いましたが」
「私もね」
「それ私もよ」
「私だって」
「わたくしもですわ」
雅美以外の友人達も稲穂の母も言った。
「どうも」
「それはね」
「これはね」
「白いご飯の方が食べやすい?」
「そう思いましたわね、ただなくなるまでは」
長い間日本人の記憶から消し去られるまではとだ、稲穂はこうも言った。
「いかないと思いますけれど」
「そこはどうかって思うのね」
「はい、お米は白い」
「それが固定観念になるまでは」
「ならないと思いますが。何かあったのでしょうか」
稲穂は首を傾げさせつつ雅美に述べた。
「これは」
「当時の日本で」
「赤いお米や黒いお米が禍いになるか」
「そんな筈もないしね」
「ですから」
それでというのだ。
「不思議に思いますわ」
「このことはどうしてもっていうのね」
「はい、ですが」
雅美はさらに言った。
「食べたことは食べたので」
「それで、よね」
「味も食感もわかりましたし」
「そのことはよしね」
「ですわね」
稲穂は食べ終わってから述べた、そうして後は友人達と母も交えてお茶を飲みつつ歓談に移った。そしてだった。
後日自分の家の田の稲刈りの手伝いをしている時に作業服と長靴、キャップ帽に首にはタオルという姿で刈られる稲達を見て言った。
「黄金色の稲が白いお米になる」
「それが、ですわね」
「素敵ですわね」
自分と同じく作業服姿の母に笑顔で話した。
「まことに。ですが」
「ですが?」
「ここで白いと思うことが」
お米、それがというのだ。
「もう赤いお米や黒いお米はない」
「確かにそうなりますわね」
「やはり奈良時代の方々もそう思われたのでしょうか」
「お米は白いものと」
「白いものの方がいい」
「そう思ったのでしょうか」
母もこう述べた。
「当時の方々も」
「そうかも知れませんわね」
「そうですわね」
「はい、ですから」
「白いお米のみになった」
「今もそう思いましたわ」
こうしたことを話した、稲刈りの中で。そうして収穫された米を食べることを心から楽しみにするのだった。
赤米黒米 完
2019・10・24
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