序章
分かれ目
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《白鋼水命/しろがねすいめい》が《黒鋼焔/くろがねほむら》に『足りないものは直ぐに埋まる』と告げて暫く経ったある日のこと。
その日は本当に何ら変化を感じ取れない何時もと同じ日になる筈だったのだが……。
「おお焔や。買い物を頼めるかのう? 少し数が多いが頑張ってくれい」
焔の祖父《黒鋼弥以覇/くろがねやいば》がこんなことを頼むのは初めてだった。
焔にとっては生まれて初めての買い物。
「……気を付けてね」
母《黒鋼燐/くろがねりん》の言葉に違和感を覚えなかったことを焔は今も後悔している。
《永遠レイア》と《エンド・プロヴィデンス》の姿が見えなかったことにも。
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弥以覇の買い物はなかなかの数だった。
そして何件もの店を回らなければ揃わないような内容の物だった事からも時間が掛かる。
午前に屋敷を出たのに帰るのは日が暮れる頃になってしまう程に。
「疲れた……お腹も空いたし」
そんなことを考えていた焔が屋敷の門を潜ると直ぐに異常な空気が満ちていることに気付く。
(生気が無い。何か足りない)
「爺ちゃん。お父さんとお母さんは? レイア達も居ないよね? 何処に行ったの?」
焔の誕生日が近いからみんなでプレゼントでも買いに出掛けたのかと思いたかったが弥以覇の顔から察するにそんな微笑ましい事態ではないことを告げている。
「どのみち、言わねばならんか……」
深い溜め息を吐いた祖父が渋々と答えた。
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弥以覇が話してくれたそれは焔にとって呆気に取られるような内容。
「白鋼水命から今の儂ら一族当主である当代黒鋼へ、つまり焔の父《黒鋼錬/くろがねれん》へと[立ち会い]の申し込みを受けた。黒鋼であるからには挑まれれば断れぬ。じゃから場所を変えた」
二人ともその気になれば小さい街の一つや二つ、単独で壊滅させることは容易い。
「あ奴等が本気で決闘すると言うのなら、互いの力に余程の差が付いていない場合を除いては周囲に影響が出るのは避けられんじゃろうからのう。街一つくらい吹き飛ばしてしまうような戦いになるやもしれん」
水命が父と戦う。
母は見届け人らしい。
ならばレイアとエンドは?
「居らんのじゃ。錬達が出掛けた時分には居るのを確認出来ていたが……」
もしかすると錬と水命の『死合い』に割って入るつもりなのかもしれないという。
水命達が向かったのは【魔獣領域】の深部であり、軍属の【魔術師】であろうとも、一定水準の戦闘能力が無ければ無事に帰れないとされ
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