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出征兵士を送る歌
第四章
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「これまで」
「ないよ」
「そうだろ、だからな」
 それでというのだ。
「祖父ちゃんの言うことを信じろ、日本はな」
「恥ずかしいことはだね」
「していないんだ、若ししていると言う奴がいたら」
「偉い人でもだね」
「そいつは嘘吐きだ」
 それに他ならないというのだ。
「間違いなくな」
「偉い人でも?」
「そうだ、お前も戦争に行く人達を見ただろ」
 祖父は孫にこのことからも話した。
「皆どんな顔をしていた」
「どんな?」
「泥棒をする様な顔をしていたか」
 悪いこと、それをという意味でだ。祖父は孫に言った。
「どうだった」
「そんな顔じゃなかったよ」
 好機はそのことははっきりと答えた。
「全く」
「そうだろ、悪いことをする奴の顔だった人はいなかっただろ」
「一人もね」
「それはあの戦争が日本にとって正しかったからだ」
「そうした戦争だったからなんだ」
「その戦争に行く人が悪い顔をするか」
「皆いい顔をするね」
 好機もそのことはわかった。
「言われてみれば」
「そうだろ」
「うん、本当にね」
「日本を守る、その為に行ったんだ」
「それでその戦争を悪いことって言う人は」
「嘘吐きだ、裁判があるらしいが新聞でその時に悪いことをしたという人達の顔も見ろ」 
 後に極東軍事裁判と呼ばれるその裁判の被告人達の話もした、この戦争の責任者である。
「そのうえで祖父ちゃんの言葉の意味を考えるんだ」
「それでわかるんだね」
「そうだ、祖父ちゃんは尋常学校しか出ていないけれどな」
 それでもというのだ。
「言うぞ、あの戦争は正しくてな」
「行った人達もだね」
「悪い人達じゃないんだ」
 祖父は孫に強い声で言った、そして孫はこの言葉を忘れなかった。
 長い歳月が経った、好機は地元の高校まで進学して家業を継いだ。祖父は天寿を全うし安らかに世を去った。
 あの戦争が否定されていく中で好機は生きていき結婚し家庭も持った。その末に。
 八十を越え実家に遊びに来た大学生の孫にこんなことを言われた。
「最近新聞とかテレビが酷くてさ」
「ああ、嘘ばっかりだろ」
「前の戦争とか昔の日本は酷く言うのに」
 それでもとだ、孫の好一は祖父に梅酒を飲みつつ話した。
「北朝鮮はいいんだよ」
「あの国は最悪だぞ」
 祖父は一言で言い切った。
「よくて戦前の日本と同じとか言うな」
「テレビとか新聞だとな」
「それは嘘だ」
 好機はまた言い切った。
「戦前の日本はあんなのじゃなかった」
「祖父ちゃん知ってるよな」
「その頃にいたんだぞ」
 その戦前の日本にというのだ。
「知らない筈あるか」
「そうだよな」
「全く違う、あの国は犯罪者そのものだ」
「人で言うとそうか」
「そうだ、将軍様
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