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戦国異伝供書
第六十話 死闘その十三

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「この戦は」
「そしてそのうえで、ですな」
「この戦の後も」
「武田家の為に」
「わしは働く」
 そうすると言うのだった。
「今源次郎に言われたしな」
「何とか助かったので」
「それではですな」
「さらに戦っていきますな」
「そうする」
 信繁の目の光は強い、それは先程までと同じだが違うのは死ぬことを覚悟するのではなく生きようとするものだった。それでだった。
 信繁は死兵ではなく生きる為に戦う者となっていた、信玄も本陣から彼のその動きを見て笑みを浮かべて述べた。
「よし、二郎は大丈夫じゃな」
「先程まで討ち死にされるおつもりでしたが」
「それが我等にもわかります」
「今の二郎様は生きられるおつもりです」
「当家の為に」
「今二郎は死んではならぬ」
 信玄は強い声で言った。
「あの者はこれからも働いてもらう」
「当家の為に」
「是非にですな」
「二郎様は戦だけでなく政も見事です」
「だからですな」
「そうじゃ、ここで死んではならん」
 絶対にというのだ。
「だからじゃ」
「源次郎殿を向かわせたのですな」
「そしてそれが上手くいっていますな」
「今源次郎殿は一騎当千の働きをされています」
「十勇士も一人一人が」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのだ。
「この度はな」
「源次郎殿に命じられましたな」
「この場を凌ぐ為に」
「そして二郎様を救われる為にも」
「そうした、そしてな」
 信玄はさらに語った。
「あ奴はもう一人助けてくれるぞ」
「山本殿ですか」
「あの方もですか」
「源次郎殿は救われますか」
「これより」
「源次郎ならしてくれる」
 幸村、彼ならというのだ。
「必ずな、だからな」
「山本殿も助かる」
「そしてですな」
「この本軍自体もですな」
「凌げますな」
「今の状況を」
「源助達は暫くしたら来る」
 高坂達が率いる別動隊もというのだ。
「そしてあの者達が来ればな」
「その時はですな」
「兵は互角になり」
「しかも挟み撃ちになります」
「形成は逆転しますな」
「そうなりますな」
「その時に我等は勝てる」
 思念は言い切った。
「だから我等もじゃ」
「はい、凌ぎましょう」
「ここは」
「何としても」
「そうするぞ」
 こう言ってだった。
 信玄は山の様に本陣に座して敵に背を向けることなく采配を続けた。
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