第六章
[8]前話
「お母さんの言った通りでしょ」
「晩ご飯までに帰って来るって」
「そうなったでしょ」
「遅くなるって思ったのに」
「はじめてのデートはこんなものよ」
母は笑ってこうも言った。
「遅くなるって思ってもね」
「ならないのね」
「だって何もわかっていないし慣れてもいないから」
だからだというのだ。
「それでね」
「早くなるのね」
「やることがわかっていないし気付いていないし」
母はさらに言った。
「勇気もね」
「それもなの」
「ないからね」
「そこまでわかってるのね」
「経験者よ、お母さんは」
それ故にという言葉だった。
「だからね」
「こうしたことも知ってるの」
「そう、だからね」
「晩ご飯までに帰って来るって」
「そう言えたのよ」
「そうだったのね」
「それでその通りになったから」
それでと言うのだった。
「あんたも内心驚いているでしょ」
「かなりね」
「そうよね、けれどそれがね」
「デートなのね」
「はじめてのね、それでね」
母は鍋の火を止めた、そうしつつさらに話した。
「これからもデートしてね」
「わかっていくのね」
「色々とね、デートというか恋愛も深いわよ」
「本に書いてあったけれど」
「実際にそうなのよ、それは経験してみてね」
実際にというのだ。
「わかっていくものだから」
「私もこれからなのね」
「そうよ、勉強していきなさいね」
デートひいては恋愛のことをというのだ。
「いいわね」
「わかったわ、それじゃあね」
「そっちも頑張っていきなさいね、それで晩ご飯だけれど」
母は今度はそちらの話をしてきた。
「お豆腐と茸のお味噌汁とね」
「あっ、いいわね」
博美の好物だ、だからこう返した。
「それは」
「それと鰈の煮付けとレタスと玉葱炒めたから」
「レタス炒めたのね」
「それもあっさりしていていいでしょ」
「ええ、それじゃあ」
「食べながらデートの詳しいお話聞かせてね」
こう娘に言うのだった。
「そうしましょう」
「それじゃあね」
「お父さんは今日お仕事だし丁度いいわ」
女同士で話が出来るからだというのだ。
「じっくり聞かせてね」
「そうさせてもらうわね」
娘もにこりとして笑った、そしてだった。
博美はデートから日常に戻った、そのうえで服を着替えてリボンも外してメイクも落としてだった。
母に一緒にご飯を食べながらデートの話をした、振り返るとはじめてのデートは色々反省点があった、だがそれはとても楽しいものだった。
リトルデイト 完
2019・10・21
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