第五章
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「それじゃあ」
「ああ、お昼はな」
「スパゲティね」
「それ食おうな」
「わかったわ」
博美はにこりと笑ってだった。
そのうえで二人で今度はスパゲティを食べた、二人共それを食べてから後は商店街を巡ったりデームセンターでプリクラを撮ったりUFOキャッチャーをしてだった。
心から楽しみそのうえで。
季節外れの砂浜に出た、季節ではないので泳いでいる人はいない。悠一はここもデートスポットであると知って博美を誘ったのだ。
夕暮れの海は夕陽で紅く染まりそこに銀の波も見える、白い砂浜に波が届く度に波音が聞こえる。その中で。
二人は横に並んで歩いていた、そしてだった。
悠一は紅い海を観つつ博美に言った。
「いいよな」
「そうよね、静かでそれでいてね」
博美も海を観ている、その先には赤く大きな夕陽があって海に沈もうとしている。
「奇麗で」
「この時間の海ってな」
「独特でね」
「本当にいいよな」
「ええ、何かずっとね」
ロマンチックな気持ちになってだ、博美は言った。
「ここにいたいわ」
「そう思うよな」
「少し寒いけれどね」
博美はくすりと笑ってこうも言った。
「思うわね」
「そうだよな」
「ええ、じゃあ」
ここでだ、博美は。
そっと悠一の手に自分の手を持って行ってだった。
彼の手を握ろうとした、だが。
それは勇気が出なかった、今観ている夕陽が今ここでと言った気がしたがそこまでは勇気が出なかった。
それでその手をリボンにやるときつく締めているのがわかった、緊張していてそうしてしまったことにも気付いた。
それは悠一も同じだった、博美の手に自分の手を重ね合わせようとしたがそれは出来なかった、それで。
悠一は先程博美が言った言葉を思い出して彼女に言った。
「もう寒いし」
「それでよね」
「帰ろうか」
「そうね、もうすぐ日が落ちるし」
博美も悠一の言葉に乗って応えた。
「それじゃあね」
「そうしようか」
「ええ、それで」
「駅まで戻って」
「また明日ね」
「学校でな」
二人でこう話してだった、手をつなぎ合わせないままで。
二人は駅まで戻ってそこで別れてだった、それぞれの家に帰った。
博美が家に帰った時はもう暗くなっていた、だが夕食はまだ先で。リビングに入ると夕食を作っていた母に笑って言われた。
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