第一物語・前半-未来会議編-
第十二章 抗いの行く先《2》
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豊は飛ばすように声を出す。
「友達ではありませんよ、彼とはただの仲間です」
「仲間……?」
「咲先生は知らないでしょうが、セーランが自分のために頼ってくるのは今回の告白が始めてなんですよ」
「……」
「彼はいつも行くべき道を示していた、だけど――」
それは自分や他の者が何もしなかった、ということだ。
彼だけに任し、自分達は道を示されるのを待っている。
だが、もうそれは嫌だ。
だから、
「彼と共に私達も道を示す」
「それは幣君と共に行くということですね」
「はい、もう彼一人で行かせることはしたくない。これからは皆で一緒に世界を歩む!」
その言葉を聞き、皆は飛豊の横に並ぶ。
皆、思っていることは同じなのだ。
彼を馬鹿にし笑ったりもした、だがその態度とは別に尊敬もしていた。
雨の空の下、学勢の一列は互いに思うことは一致している。
全ては長のため。
そんな生徒を見て、咲は一歩後ろへ下がった。
「な、なんでですか、そこまでするなら幣君を止めることも」
「咲先生聞いて下さい」
飛豊の言葉の後に、右にいたアストローゼが前に出る。
堂々と立ち、眼前にいる自分の担任に伝える。
「私はあの馬鹿な長に未来を見た。奥州四圏や各国の圧力を受け、身動きの取れない日来を知った私は心底落胆した。だが、そんな私に夢や希望という儚き勇気をくれたのはあいつだ」
そして彼の右、ニチアも前に出る。
「幼い頃、重度の人見知りだった私に、セーランよく声をかけてくれた。始めはウザかったけど、いつの間にか他人と話せるようになって気がついた、あの長のおかげだって」
変わるように、飛豊の左にいた空子が言う。
「うちが中等部の後半に転校して来てまだ日来のことが分からなかったとキ、分かるまで案内してくれたのセーランだったネ。その後も色々面倒見てくれてとても助かったヨ」
一番左にいた太りぎみの少年、天布は下を向きながら話す。
「小等部のとき、日来一のデブだった自分が皆に馬鹿にされて傷ついてたとき、セーランはこんな自分をかばってくれた。そしたらいきなりデブでも素早いデブならかっこいいだろ? とか言い出して、毎日走らされていい迷惑だった。
だけど、中等部の体育祭のときのクラス対抗リレーで走ったらすっんごく速く走れて、それ以来自分を馬鹿にしてた連中とはいい仲になって、マチョラ君とも友達になれた」
「友達」
天布の横にいた上半身裸で布で顔を覆い隠す巨漢の生徒、マッチは一言だけを言う。
左の人差し指で頬を掻き、天布は嬉しみの笑みを漏らす。
彼は自分達に多くのことをしてくれた、だから今度はその恩返しついでに同じ立ち位置へと並ぶ。
飛豊は咲に近づくため、濡れた地面を歩き出す。
咲の衣服は雨で濡れ、肌に水が流れる。
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