怪盗乱麻、リゾートへ発つ
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
“ラディへ。疲れてると思うから栄養のつくものを用意しておきます。好きな時に食べてください。昨日もかっこよかったです。アネモネ”
「……いただきます、姉さん」
テーブルの上にメモ書きに感謝を込めて、わたし、アッシュ・グラディウスは手を合わせた。
目の前のテーブルにはベーコンエッグ、ピザトースト、サラダ、ヨーグルトが置かれている。朝ごはんには多いだけど、時間は11時。もう昼食を兼ねるような時間だ。作った姉さんも、わたしが遅めに起きることは承知の上だったのだろう。
「うん、美味しい」
一人暮らしだから自分も料理はできるけど、アネモネ姉さんの腕前にはとても叶わない。ピザトーストなんて誰でも作れる簡単な料理だけど、調味料の加減や焼き加減が違うのか、パリッと香ばしく味も全然違う。
わたしの好みに合わせてくれた固ゆでの黄身にたっぷりソースをかけながら、空いた手でテレビをつける。アローラのニュースにチャンネルを合わせると、想像通り『怪盗乱麻、またも現る』という見出しとともにVTRが流れていた。
十人以上の警備員が黒い衣装をまとった金髪の女の子を包囲し、にらみつけている。
女の子が傍らに浮かぶ立方体に声をかけると同時、警備員たちは取り押さえにかかる……が。
『ご覧ください、この不思議な光景を。全速力で挑みかからんとする警備員の動きは、決してスロー再生されていません。無加工の映像です』
ニュースキャスターの言う通り、VTRの端に移るデジタル時計はしっかりと一秒ずつ時を刻んでいる。にもかかわらず、警備隊の訓練された動きはまるでヤドンの散歩のように遅い。
そして女の子の動きはただ歩くだけだ。まるで普通に買い物にでもきたみたいな足取りで、水平のエスカレーターを歩くようにぐんぐんと進んでいく。
最初はトリック映像だーなんて思われることもあったけど、画面の一部だけスローにして一部だけ早回しにするなんてそんなことができるはずもない。
そしてそのまま宝まで歩いていき、歯噛みする警部さんを無表情であしらってあれよあれよという間に宝は怪盗の手の中へ。
「金剛玉、もっときれいなダイヤみたいなものだと思ってたんだけどなー」
VTRから視線をはずし、ポケットに手を入れて。
わたしは昨日盗んだ宝石を取り出した。真ん丸で淡く銀色に輝くそれはキレイといえばキレイだけど、ジュエリーショップにあるダイヤの美しさには程遠い。
『一体どういう性質の技なのでしょうか、怪盗を止めにやってきた島キャプテンの技も、速度や威力が捻じ曲げられているとしか思えない光景が広がっていました。一年前アローラに現れた怪盗乱麻を名乗る少女、そして元祖の怪盗である模犯怪盗の今後一層の活躍に島民たちは胸を躍らせる反面、警察にはより厳重な対策が求められます
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ