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夢から醒めた夢
W
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うに。
 ──りあむの精神は、音を立てて崩壊を始める。


 やめてよ、分かってるよ。気付いちゃうよ。だってPサマの言ったこと、何も間違ってない。人並みの努力もできないのにアイドルとして有名になって。ぼくは何も頑張ってないのに。他の子たちは毎日レッスンとか頑張ってて、尊いのに。何も尊くないどころか、自分の無能さから逃げたくて毎日レッスンをサボってるような、Pサマからの連絡も未読無視しちゃうような、そんなぼくが、アイドルだって? 耐えられる筈もないよな。だから寧ろ良かったって思えるよ、本当はぼく、ずっと逃げたかった。ぼくだってチヤホヤされたかった、誰かから必要とされたかった、誰かから愛されたかった、でもそんな資格ぼくにはなかった。心がしんどいって、たったそれだけでレッスンもサボっちゃうような、ぼくみたいなダメ人間、事務所には一人もいなかった! すぐ気付いたよ、アイドルは頑張ってるから尊くて、ぼくは頑張れないから、自分の無能から逃げてたいから、尊くなれない。
 大好きだったアイドルを、人生ワンチャンの為に利用したのは、このぼくだ。
 ぼくは、そんなぼくを許せない。きっとPサマがああしなくても、ぼくはあれ以上あの場所に居られなかった。

 なぜならぼくは、『アイドルどころか人間として無能な屑』だから。


 あの無感情な日々は執行猶予のようなものだったのだろう。
 もうとっくに壊れているものを、その場しのぎで繋ぎ止めて。先延ばしにして。その仮染めが、元に戻っただけ。本来こうだったものが、あるべき姿に返っただけ。


 世界に苛まれたりあむの視界の片隅で──カラン、と音を立てて、ブロン錠の瓶が倒れた。
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