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戦国異伝供書
第六十話 死闘その十一

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「叔父上も同じじゃ」
「これではです」
「お二方を助けられません」
「何とかしたいですが」
「それでも」
「これはどうしたものか」
 義信も歯噛みしていた、だが。 
 信繁も山本も次第に傷を負っていき周りの兵達も一人また一人と倒れていっていた。それを見てだった。
 色部勝長、細長い顔をした彼が兵達に言った。
「あれは武田の副将二郎殿じゃ」
「武田殿の弟君の」
「あの方ですか」
「政戦両方で武田殿を助けておられる」
「あの方ですか」
「あの御仁を討ち取れば大きい」
 実にとだ、色部は兵達に話した。
「だからな」
「ここで、ですか」
「あの御仁を討ち取りますか」
「そうされますか」
「今が好機じゃ」
 まさにというのだ。
「だから行くぞ」
「わかり申した」
 兵達も応えた、そしてだった。
 色部はすぐに信繁の軍勢に迫った、信繁はその彼等を見て言った。
「いよいよじゃ」
「ではこれより」
「戦われますな」
「最後の最後まで」
「そのうえで、ですな」
「わしは腹を切らぬ」
 決してというのだ。
「そのつもりはない」
「だからですな」
「ここは」
「倒れるまでな」
 まさにその時までというのだ。
「戦おうぞ」
「ですな、ではです」
「我等もです」
「冥土までお供します」
「丁度目の前に来ました」
「それではな」
 信繁は自ら槍を取って兵達に応えた。
「侍としてな」
「最後の最後まで戦い」
「華々しく散りましょうぞ」
「これまで多くの猛者がそうしてきた様に」
「我等も」
「楠木殿を思い出すのじゃ」
 楠木正成、彼をというのだ。
「あの方の様にじゃ」
「死ぬその時まで戦い」
「我等は武名を残しますな」
「この川中島において」
「そうなりますな」
「そう思うと戦えるであろう、では戦うぞ」
 実際にとだ、こう言ってだった。
 信繁は色部が率いる軍勢に向かおうとした、死ぬ気で。だがそこにだった。
 突如色部の軍勢の横に十人程の者達が来た、その彼等がだ。
 色部と彼の軍勢に襲い掛かった、その突然の攻撃を受けた色部は多くの兵が倒されるのを見て思わず声をあげた。
「ど、どうしたのじゃ」
「わかりませぬ」
「突然攻められました」
「横から十人の者達に」
「その者達が随分強く」
「まるで歯が立ちませぬ」
「これは一体何者でしょうか」
「ううむ、わからぬが」
 それでもとだ、色部は兵達に述べた。
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