第六十話 死闘その三
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「何とかな」
「千ですか」
「それはまた多いですな」
「当家で千とは」
「そこまでになりますと」
「うむ、しかしな」
それでもというのだ。
「それだけあれば違うであろう」
「はい、確かに」
「そのことはその通りです」
「まさに」
「千丁もあればです」
「どれだけ違うか」
「鉄砲がそこまであれば」
旗本達も口々に言った。
「色々と使えますし」
「有り難いです」
「戦の場でも」
「だからな」
それでというのだ。
「この戦の後でお館様に申し上げよう」
「そうしてですな」
「千丁の鉄砲を備え」
「そしてそのうえで戦に使う」
「そうしますな」
「是非な」
こう言う、そして後に高坂は実際に信玄にこのことを信玄し信玄も頷いたが武田家は鉄砲は堺等を織田家に抑えられ独占されていて思う様に集められなかった。
だがその話をしつつ妻女山に向かっていた、そうしてだった。
今まさに妻女山に入り上杉の軍勢を後ろから攻めようという時にだった、高坂達はその報を聞いていぶかしんだ。
「人の気配はないとな」
「妻女山から」
「それはどういうことだ」
「また面妖な」
「これは一体どういうことか」
「今は進むしかないが」
諸将の中で年配となる飯富が言った。
「しかし」
「何かありますか」
「うむ、そう思える」
こう高坂に言うのだった。
「この度は」
「その何かは」
「わからぬが」
それでもと言うのだった、飯富は。
「今は前に進むしかない」
「我等は」
「ここで怯む、退くは下の下」
そうしたものだというのだ。
「何もならぬ、だからな」
「是非ですな」
「前に進もうぞ」
「それがしもそう思う」
馬場は飯富のその言葉に頷いて述べた。
「ここはな」
「だからですな」
「うむ、ではな」
「ここはですな」
「飯富殿の言われる通りかと」
こう高坂に言うのだった。
「前に進もう」
「そして妻女山の長尾家の軍勢を」
「攻めようぞ」
「では」
高坂も同じ考えだった、それでだった。
彼は一万二千の軍勢を上杉軍の軍勢の後ろから攻め込んだ、あえて大声を立てて鉄砲も使ってそうしたが。
その本陣には誰もいなかった、このことに兵達は驚愕した。
「誰もおらぬぞ」
「旗も何もない」
「もぬけの殻じゃ」
「これはどういうことだ」
「長尾家の軍勢はおらんぞ」
「これはいかん!」
高坂はこの状況にすぐに叫んだ。
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