蒼紅:第三十八話 祈歌
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パンテーラは兄や家族である同志を失った悲しみを背負いながらも今を生きていた。
パンテーラにはソウが傍にいるようになり、少しずつ彼女も元気を取り戻している。
「GVとソウさんは今日はゆっくりされて下さいね?」
「私達、頑張って作るから」
「今日のお昼は何にしますか?」
「そうだね…」
「お前達が作る物なら何でも構わないが…」
今日の昼食は女性陣で作ることになり、GVとソウはどうするかと悩み始めた時であった。
「あ…」
「シアン…?あ…」
シアンの視線の先をGV達が辿ると、そこには制服を身に包んだミチルの姿があった。
「あなたは…」
「あ、あの…」
ミチルはモルフォの影響を受けているためか、どことなくシアンに雰囲気が飛天で見た時よりも近くなっている印象を受けた。
気まずそうに視線を逸らすシアンにミチルが口を開いた。
「あの、ごめんなさい。変なこと聞くんですけど、もしかして…あなた達は、私の知り合いじゃありませんか?あ!…えっと、実は私、事故で昔の記憶がなくって…でも、あなた達のこと、どこかで」
「お前の名前は何だ?」
「私は…ミチルです。神園ミチル」
「悪いが、俺達にそんな知り合いはいない。」
「ごめん、僕も覚えがないな…気のせいだと思うよ」
一度だけシアンの方を見遣ると、ソウとGVがミチルに答えた。
「そう…ですか…ごめんなさい。変なことを聞いてしまって…」
ミチルの謝罪を聞くと、GVとソウはシアン達に移動を促す。
「行こう…シアン、オウカ、テーラ」
「……うん」
「「…はい」」
人混みに紛れて見えなくなるミチルを気にしながら、シアンはもう己の中にはいないもう1人の自分だった家族に感謝した。
「(さようなら、モルフォ…私の…家族…)」
どうかミチルの人生に幸福が待っていることを、シアンは願った。
GV達とミチルの再会からしばらくして…。
最近、あの人達の夢を見なくなった。
何度も何度も、繰り返し見たあの人達の夢。
私のために、身を賭して戦った名前も知らないあの人達。
夢を見なくなったのはきっと…今の私が、過ぎ行く日々に"幸せ"を感じているからだと思う。
だから、私は伝えたい。
名前も知らないあの人達に…。
「“ありがとう”。私は今、幸せだよ」
どうか、あの優しい人達の行く先に幸せがありますように。
ミチルは幸せそうに笑いながら、顔も知らない…優しい人達の幸せを願うのであった。
しかし、ある場所で…。
「ベラデンまでの送り迎え お疲れ様でした。それで…これが“謡精の宝剣” へえ、ペンダントの形にしたんですね?」
「ただの
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