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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第七十一話 冬に備え、春を見据えよ
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「生き残るには相応の手を打つしかありませぬ、閣下。帝都に今のうちから連絡をとるべきかと」

「ラスティニアン、貴様の打つ手は?」
 
「軍内部の意思統一を図っています。東方辺境領軍が到着する事とほぼ同時にコウリュウドウへ攻勢をかけ、雨季までにコウリュウドウの野戦軍に一撃を与えるべきです」
 アラノックは満足して頷いた。ラスティニアンは馬鹿ではない、むしろ知恵が回る男だ。指揮官としてはともかく参謀としては申し分ない。
「本領軍が、か。それしかないがここで殿下と対立する事は避けるべきだ。今必要なのは双方の妥協だよ」
 アラノックらしい返答にラスティニアンは黙って頷いた。アラノックがそれをできるのであればそれに越したことはない。政治とは妥協の為の戦いなのだ。少なくとも政敵と銃火を交える覚悟を持たない限りは。
「殿下の周囲に打診をしつつ、という事でしょうか」
 アラノックは頷き、ラスティニアンに命令を下した。
「そちらは私とその手の事が向いている人間が行おう。貴様はあの厄介な猛獣使いを抑え込みながらコウリュウドウを突く具体案を練るように。
兵站部とよく相談をしろ、殿下から返答があるまでは対案として考えるだけで良い、無理はするな」



同日 午後第三刻 竜口湾 大喉 東方辺境領鎮定軍 軍司令部
〈帝国〉東方辺境領姫 〈帝国〉陸軍元帥 ユーリア・ド・ヴェルナ・ツァリツィナ・ロッシナ



「勝つにしてもどのように勝つか、ね。メレンティン、やはり本領軍を頼ったのは失敗だったかしら?」
「殿下、アラノックは良くやっていますよ、そのようなことは」

「えぇ彼らは完全ではなくとも尽力したわ。あの要塞に拘泥したのは少し予想外だったけど――」
 ユーリアは肩をすくめ、ため息をついた。
「今回の進行のきっかけは経済問題よ。であるからには東方辺境領が利益を得なければならない。その為には本領の介入を抑え込むしかない。
第二軍団がこの段階で攻勢限界にでるのはわかっていた。その為にも闊達な攻勢を命じたのだもの。
けれど予想以上に兵力が残ってしまっている、アシカワも敵が保持しているのね」
 本来であれば東沿道の封じ込めは既に終わっているはずだった。
だが第三軍こと西州軍は重装備を喪失したものの主力は大きな損害を受けずに後退に成功。
これが痛かった虎背川を盾に河川貿易と東州との交易で栄えた港湾都市・葦川に布陣し、弓野と東州対岸に睨みを利かせている。それならばさっさと制圧してしまえばよさそうなものだが東海艦隊の根拠地の一つだったことが悪かった。安東家が伝統的に影響力の強い東海艦隊と分家が大臣を務める兵部省、武勲を誇る西原家に六芒郭と主攻正面となる皇龍道・内王道への圧力を減らしたい守原家と駒城家の意向が一致したことで極めて速やかに河船が徴
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