ターン16 魂鋼の風雲児
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よいよデュエルが始まるのかと人垣がざわめく。遅れてもう1人の男も動き出そうとした機先を制するように、糸巻の鋭い声が響き渡った。
「鼓!何やってんだお前こんなとこで!」
「……糸巻か。久しいな、だが話は後だ。すまないが挨拶と手土産は今準備するからもう少し待ってくれ」
「悪いがそうもいかねえな。この町は一応アタシの縄張りだ」
ぽきぽきと拳を鳴らしながら前に進み、赤髪と銀髪が横に並び立つ。口の端に煙草を引っかけて火をつけたところで鼓と呼ばれた美女はわずかに口元を綻ばせ、どこかからかうような響きを帯びた声音で聞き返した。
「ご立派な職業意識だな。で、本音は?」
「何面白そうなことやってんだよ、アタシにも暴れさせろ」
「だろうな。仕方ない、そっちの奴は任せた」
「あいよ。じゃあそっちの、アンタがアタシの獲物だ。どうせ期待はしちゃいないが、精々頑張って足掻いてくれよ?」
そんな互いに気心の知れた仲であることをうかがわせる息の合った会話に、野次馬の1人になっていた少女の胸は大人な女性への憧れで高鳴る。しかし同時にその奥には、どこかチクリとしたものが突き刺さった。少女と知り合って以降、彼女はあんな表情を浮かべたことはない。それは、少女にとって初めて見る……そして鼓と呼ばれた美女にとっては見慣れたものらしい、糸巻の一面だった。
「まあなんとなく察しはつくけど……おばさん、すいません遅れました」
「ああ、清明ちゃん!よかったよ、もうおばさんどうしようかと思って困ってたのよ」
少女が初めて感じた嫉妬の欠片に自分でも戸惑う、その傍らで。別の方向に目を向けた清明に声を掛けられて振り返ったのは、いかにも町のケーキ屋さんといったイメージそのままの恰幅のいいエプロン姿の中年女性だった。安堵の表情と共に歓迎の意を表現するその女性に駆け寄った清明が、目の前の出来事について問いかける。
「で、おばさん。これ一体、どうなってんです?」
「それがねえ、さっき清明ちゃんが出てってすぐにあっちの子がお客さんで来たんだけど、そこにあの2人も入ってきてね。お店の中で暴れそうだったからおばさん怖かったんだけど、それをあの子が止めてくれて」
その言葉に、改めて彼は銀髪の女性へと視線を向ける。おそらく年齢は糸巻と同程度かやや下、どう贔屓目に見ても「子」と評するにはいささか無理のある年齢だが、それは固く口を閉ざしておいた。この世界の人間は、「BV」の危険性は身にしみてわかっている。2人がかりでデュエルディスクを見せびらかしているならば、デュエリストでもないこの店の人間に自衛しろとは最初から無理な注文だ。
「あ、清明ちゃん。あの2人、助けてあげなくて……」
「んー、まあ大丈夫でしょう。というかあの2人、かなり手練れっぽいです。下
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