ターン16 魂鋼の風雲児
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V」に一般人は極力関わらない方がいいという一般常識すらもこの男には欠けている。
「あはは、まーね。わかったらもっと労わってもいいよ」
そして彼自身も自らに向けられた疑心に気が付きつつも、あえて自分からその過去を語るようなことはしない。自分は異世界からやってきましたなどという話は、あの悪夢の一夜を経てなんとなくうやむやとなった自身への狂人疑惑を蒸し返すだけだと彼のブレインたる精霊、地縛神Chacu Challhuaとの話し合いの末に釘を刺されているからだ。
そしてなんとはなしに会話が途絶え、微妙な沈黙があたりに漂い始める。最初にその静寂に耐えきれなくなった幼い少女が何でもいいから口火を切ろうとした矢先、清明が目を細めて立ち止まった。
「あ、あのお姉様」
「……ん?待った、なーんか嫌な感じがする」
じっと前を見つめて耳を澄ますことしばし、今度は急に小走りになる。つられて女性陣も小走りについていくと、やがて何かの建物の前を取り囲む人垣が見え始めた。
「まずいなー。その店ってのがあそこなんだけど、僕が離れたのバレちゃったかな?すみませーん、通ります!」
「アタシらも行くか、八卦ちゃん」
「はい、お姉様!」
器用に隙間を押し通り、ひょいひょいと最前列に進む清明。それに続いた糸巻と八卦にも、やがて何を見るためにこれだけの人間が集まっているのかが見えてきた。店の前で、2人の男と1人の女が一触即発状態で睨みあっている。
男の方はまだ若く、どちらもせいぜい20歳程度。女の方はそれよりも一回りは上に見える大人びた雰囲気の理知的な美女だが、今はその端正な顔立ちに不機嫌そうな仏頂面が張り付いている。しかし彼女らの何よりの特徴は、その3人がそれぞれ腕に見覚えのある機械……デュエルディスクを装着していることだろう。このご時世で3人ものデュエリストがこうおおっぴらに出歩いているとあれば、野次馬が集まっても無理はない。もっともこれだけの数の人間が足を止めた理由の半分は、その女に目を惹かれたからというのもあるだろう。顔立ちに見合った長身で足の長いモデル体型に、ゆったりとしたデザインにも関わらずなおその下のメリハリのあるボディラインを主張させる灰色の縦セーターと群青のロングスカート。カメラやマイクといった機材が存在しないことに目をつぶれば、映画か何かの撮影といっても通用するだろう。
苛立ちを押さえるようにゆる三つ編みの銀髪をかきあげた女が、くいくいと左手の手のひらを上に向けて男を手招きした。
「どちらでも構わないが、早くかかってきたらどうだ?どうしてもと言うのなら、多少のハンデとして2人同時でも構わないが」
「ふ、ふざけやがって……!」
あからさまな挑発に男の1人がデュエルディスクを起動し、い
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