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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン16 魂鋼の風雲児
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と先導する少年の背に声をかける。

「で、だ。とりあえずお前さんの話、もう少し詳しく聞かせてもらおうか」
「はいはい。簡単に話すとその店、1か月ぐらい前に若いチンピラが来店してねー。えらいイライラしてたし、何があったかは知らんけど最初っから憂さ晴らしでいちゃもんつけに来たんだろうねきっと。まあとにかく適当にケーキ頼んでお金払って、そこから即クレームよ」
「クレーム?」

 オウム返しする八卦に、大人びた所作で軽く肩をすくめる。しかし糸巻の目は、思い出すだけでよほど腹に据えかねたのか瞬間的に指が白くなるほどに力を込め拳を握りしめていたのを見逃しはしなかった。

「……そ。この店では床にゴキブリ飼ってんのかーってさ。まあ実際、そいつの指さしてた先で黒いのがうぞうぞしてたのよ」
「うぞうぞ……」

 謎擬音につい情景を想像してよほど嫌な気分になったのか、少女の顔がやや引きつる。

「ただ、ねえ。僕もずっと後ろでレジ並んでてなーんかピンと来たから、試しに踏んづけてみたのよ」
「ひっ!?」

 またしても嫌な想像をしたらしく、引きつった表情はそのままに少女の顔が青くなる。

「そしたらそいつ、だいぶ体重乗せたのにぴんぴんしてやんの。ただ面白いものが見えてね、潰れない代わりにその恰好にノイズが走ったのさ」
「「BV」か?」
「今思えばそうなんだろうねえ。黒光りするG、飛翔するG、対峙するG……まあなんだっていいけどさ、ともかくその辺のカードを実体化させたのかね」
「なるほどオーケー分かった、「BV」がらみとあったらそいつは間違いなくアタシらの縄張りだ」
「それもなんだっていいさ。ただ、僕も実家がケーキ屋でね。うちみたいな飲食にその手の悪評はほんとに死活問題で、それがわかってるからどうしても見過ごせなかったのよ。本物がお客さんの見えるところに出たってんならまだしも、それじゃあんまりにも浮かばれないからね。で、後は逆切れされたから軽くデュエルして追い払って、そのままお礼されてなし崩しに3食屋根付き生活をさせてもらうことになったってわけ」
「なんつーか、お前も大変なんだな」

 糸巻は普段の言動からは勘違いされがちだが、あまり他人のプライベートに土足で踏み込むことを良しとはしない。あくまでも相手が心を閉ざす限界を見極めたうえで、決して一線を越えはしない。
 それでも今の会話で流されたいくつかのワードは、彼女の興味を引くには十分なものだった。例えばあの言い方からすると、そのケーキ屋とやらに居候するまでこの男は3食屋根なしの生活を送っていたということになる。彼女が彼に初めてカードショップ「七宝」で出会ったあの日、彼はどこで生計を立てていたのだろう。それに、「BV」はデュエルポリスの管轄であるという国際的な了解も、もっと言えば「B
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