暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン16 魂鋼の風雲児
[1/12]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
「はーん、なるほどねえ」

 病室。上体だけ起こしてベッドの上から窺い見る鳥居とその脇にある見舞い客用の椅子で足を組む糸巻が視線を注ぐ中、その視線の中心人物……遊野清明がゆっくりと頷いた。

「デュエリストフェスティバル、かあ」
「頼む。アタシともう1人他所から手伝いに送られてくる奴、まあ誰かは知らんが……ともかく2人だけじゃ、さすがに手が回らんからな」

 デュエリストフェスティバル。それは読んで字のごとく、デュエリストたちの祭典である。少なくとも、名目上だけは。
 かつてこの祭典は、プロデュエリストたちとそのリーグが互いの垣根を越えて手に手を取り、3年に1度行われる大規模なものだった。普段ならば絶対にありえない所属リーグやライバル会社をスポンサーに持つ選手同士が組んでのタッグデュエル、プロ1人に対し抽選で選ばれた観客3人という変則マッチ、新型デュエルディスクの発表会やその試遊……ありとあらゆる方面からデュエリストたちの嗜好を満足させる、明るく楽しい3日間のお楽しみ。開催地は毎回違う国が選出され、各国その趣向を凝らして世界中から集うデュエリストと観客を歓迎したものだ。その経済効果は抜群であり、日本円にして10桁は軽く動いたとも言われている。それだけ、デュエルモンスターズは世界の中心だったのだ。

「いいなぁ。私も、お姉様の晴れ舞台を生で見たかったです」
「ま、それも昔の話さ。今はせいぜい、アタシらデュエルポリスが主催する町内のちっぽけなお祭りがいいとこだな。徹底的に落とされたデュエルモンスターズの評判を少しでも回復させるためとかなんとかで、近くのちびっ子を招待してアタシらのデュエルやソリッドビジョンを体験してもらう。ポジティブキャンペーンってやつさ」

 そう小さく笑う糸巻。だがその笑みは寂しげで、自嘲の色を帯びていた。彼女がいつも昔のことを話すときと同じように……もう2度と手に入らない、望まずして失ったかつてを思い返すように。
 そしてそんな気配を察知し、かすかに清明が顔をしかめる。その表情の変化には2つの意味が込められており、まずひとつが単純に湿っぽい話は彼の好むところではないという意思表示。そしてもうひとつはこの話の流れと場の空気から、一層断りづらくなったことを察知したためである。そしてそんな機敏な感情の変化を読み取った糸巻が、流石にこの程度じゃなあなあで押し切れねえかと内心で毒づく。

「なあ、どうにかならないかね」
「ああいや、僕としても協力したいのはやまやまなんだけどね」

 彼女らには知るよしもないが、元来この遊野清明という男はかなりの祭り好きである。それもかなりの行動派で、常々見るアホウよりも踊るアホウでありたいと大真面目に言い出したりもするタイプである。そんな彼がデュエリストフェスティバルの存在を知っ
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ