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第百二十四話 アスターテ星域会戦なのです。
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いる物なのだから。
「どんな相手であろうとも、シャロン様以外に屈することはありえない」
そう言い放つと、アンジェは通信を切った。一瞬だったがアンジェの脳裏にはティファニーの顔が浮かんだ。このところ明らかに逡巡の色を出し始めている彼女をシャロン以下は放っておいている。あんな女のことなどアンジェは一顧だにしていなかった。裏切るとしても一撃で粉砕できる相手なのだ。しかも相手はたった一人。力があるとはいえ、シャロンの前には何もできない存在なのだから。
けれど――。なぜ――。
自分はティファニーを思い浮かべたのだろう。
一人――。
アンジェはその言葉に思い当たった。ティファニーも一人、私も一人。そして、目の前で先ほど話をしていたカトレーナも一人。シャロンはだれにも頼らないし、誰にも寄り添うことをしない。
もし、とアンジェは思う。この戦いを制したとしても、この戦いの先にあるものは一体何なのだろう。
アンジェは首を振った。取り返しのつかない境地に達する代わりに通信回路を全艦隊に向けて解放し、こう宣言した。
「全艦隊、シャロン終身最高評議会議長の為に命を捨てなさい!!!」
間髪入れず、シャロン・コールが沸き起こった。アンジェはそれを聞きながら顔をしかめる。その純粋な熱狂に普段は軽蔑と嫌悪を覚えるのだが、今この時はなぜか彼らが羨ましかった。
* * * * *
ロイエンタール艦隊とミッターマイヤー艦隊は、この世界にあっても双璧の名のもと他の艦隊とは一線を画す存在となっている。双璧と言えば、ティアナ、フィオーナにも当てはまるところであるが、彼女たちの双璧ぶりとはまた違う色合いを両者は出している。
自由惑星同盟との戦い、正確に言えば、対シャロン戦の除幕式。その本格的な序曲がアスターテ星域会戦であり、その先鋒を務めるのが、ミッターマイヤー艦隊なのであった。
ミッターマイヤー艦隊
ロイエンタール艦隊
ミュラー艦隊
アイゼナッハ艦隊
アレーナ・フォン・ランディールの私設艦隊
これらが別働軍集団としてローエングラム本隊から離れ、敵の一個集団の撃破に向かったのである。アレーナはいわゆる後詰として布陣し、基本的にはロイエンタール、ミッターマイヤーらに任せるつもりだった。
「全速前進!!」
ミッターマイヤーがベイオウルフ艦橋で吼える。彼は闘牙を全開にし、来るべき大戦の開幕を宣言したのだった。
ミッターマイヤー艦隊はミッターマイヤー四天王の各々6,000隻を前衛に、ミッターマイヤー艦隊本隊1万隻で構成されている。
これに、ロイエンタール艦隊2万隻、ミュラー艦隊1万5,000余隻、アイゼナッハ艦隊1万5,000余隻、そしてアレーナの私設艦隊2万6,000余隻が続く。
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