第百二十四話 三国だけでなくその十二
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「二言はない」
「左様でありますか」
「自らの命と引き換えに他の者の安堵を願う心はよし」
英雄はこのことを認めて言うのだった。
「ならばな」
「それならですか」
「その心をこれからも高知の為に使え」
「そうしてですか」
「治めるのだ、土佐一国はだ」
まさにこの国をというのだ。
「無事にだ」
「これからもですか」
「治めてもらう」
「ではこのことを」
「主に伝えよ」
使者である彼のというのだ。
「いいな」
「有り難きお言葉、それでは」
「すぐに高知に帰るといい」
そして伝えよと言うのだった、こうしてだった。
高知は攻められる前に自ら降り英雄は彼等を受け入れて家臣とした。こうして四国の全てが英雄の手に入った。
英雄は高知城に入り土佐の主と会った、その主はというと。
まだ若い十代と思われる端整な顔の持ち主だった、英雄は自らの前で下座にいる彼に対して胸を張って問うた。
「まことに腹を切るつもりだったか」
「はい」
少年は英雄に素直な声で答えた。
「そうすべきと思いました故」
「主としてか」
「そうです」
こう答えるのだった。
「全ての責を負い」
「そうか、だがな」
英雄は少年の顔を見つつ言った、少女と言っても通用する程の顔だ。
「俺はそうしたことは求めない」
「それがしの命は」
「降るならな」
それでというのだ。
「いい」
「左様ですか」
「腹を切る寿命までだな」
「そのままでいるつもりでした」
「そうだな、だがな」
「それはいいですか」
「むしろその若さでそれだけの覚悟がある」
少年のそれを見ての言葉だ。
「俺はそれを買う」
「それで、ですか」
「君、いやそなたと言うべきだな」
この浮島での言葉使いからだ、英雄は話した。
「そなたはその覚悟故に死なせるのは惜しい」
「そう思われるからですか」
「だからだ」
それ故にというのだ。
「俺はな」
「それがしをですか」
「用いる、聞いた話ではこの国をよく治めていた」
善政を敷いていたというのだ。
「年貢や税は軽く田畑や街を整えて利を得ていたな」
「そうしたものでないと」
「国は豊かにならないか」
「はい、そう考えていまして」
それでとだ、少年は英雄に答えた。
「ですから」
「年貢や税よりもか」
「国を豊かにして」
「そこから利を得ていたか」
「重い年貢や税はです」
「民の力を奪うか」
「そうしてしまい」
そしてというのだ。
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