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レーヴァティン
第百二十四話 三国だけでなくその十一

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「受け入れず殺すならな」
「誰も降らなくなり」
「かえってよくはない」
「そういうことですね」
「信長公もそこは違った」
 よく苛烈だの残虐だったのと言われる彼でもというのだ。
「降った者はだ」
「許してですね」
「才覚のある者は重く用いていた」
「それが身内であっても」
 異母兄の織田信広にもそうだったし結局は殺してしまった弟である織田信行も一度は許しその子津田信澄は彼の片腕とも言ってよかった。
「そうしていましたね」
「その方がいい筈だ」
 信長の様なやり方の方がというのだ。
「俺は頼朝公にも北条家にもならない」
「決して」
「それは誓ってもいる」
「誰に対してでしょうか」
「自分自身、そして」
 英雄は今の問いにも答えた、それも毅然として。
「神仏にだ」
「人よりも高位の存在にもですね」
「そうしている、ではな」
「高知についても」
「降ればそれでいい」
 こう言ってだった。
 英雄は今は伊代から四万十川西への道も整えさせ阿波から土佐の東も湖路から攻めさせていって高知を圧迫していた。
 そして四万十川への道が整った時にだった。
 その高知の方から使者が来た、死者は英雄の前に参上するとまずは深々と頭を下げてからそのうえでだった。
 十二人を下に置いた英雄にだ、こう申し出た。
「殿のご決断を聞いて下さいますか」
「何だ」
 英雄は使者、初老の男である彼にこう返事をした。
「それは」
「はい、最早当家の劣勢は明らか」
 それでというのだ。
「それで殿が腹を切られ」
「そのうえでか」
「それで歯向かった罪の償いとし」
「高知はか」
「我等家臣も高知の地も民も」
 その全てをというのだ。
「助けて頂きたいとです」
「そのうえでだな」
「無事に治めて頂きたいとです」
「申し出たか」
「左様です、して返事は」
「高知のことはわかった」
 英雄は使者にまずはこのことから答えた。
「一切手荒なことはしない」
「そのうえで」
「治めよう、そして」
 英雄はさらに言った。
「そちらの主だが」
「殿ですか」
「腹を切るには及ばない」
 こう言うのだった。
「そして出家もだ」
「そちらもですか」
「及ばない」
 そうだというのだ。
「そのまま我等に降ってだ」
「そのうえで、ですか」
「働いてもらいたい」
「そうして宜しいのですか」
「今言った」
 英雄は使者に彼の言葉で返事をした。
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