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戦国異伝供書
第五十九話 死地へその十一

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「今はたんと食えと」
「そしてじゃな」
「明日思う存分戦えと」
「それでよい、無論お主にもじゃ」
「存分にですな」
「戦ってもらうからな」
 だからだというのだ。
「頼むぞ」
「はい、我等十一人で」
「戦ってくれるな」
「そう致します」
「無論我等もです」
 板垣も言ってきた、彼と甘利は本陣にいてそのうえで信玄の左右を固めて共に戦うことになっている。
「お館様の為に」
「その様にしてくれるな」
「必ず」
「兵の士気はこれ以上までになく高いです」
 甘利はこのことを指摘した。
「ですから」
「戦になればな」
「彼等もです」
「思う存分働いてくれるな」
「お館様の下で」
「そうであるな、やはりわしの宝はな」
 それはと言うのだった。
「お主達じゃ」
「人ですか」
「そうじゃ」
 まさにと言うのだった。
「人は城であり石垣であり堀であるな」
「まさに人あってですな」
「国でありな」
「その人こそが」
「わしの宝じゃ」
 そうだというのだ。
「何といってもな」
「金や銀や書は」
「そうしたものもよいが」
 それでもというのだ。
「一番はな」
「我等ですか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「何といってもな」
「では」
「その宝の力を借りて」
「この度の戦は」
「勝とう」
 こう言うのだった。
「必ずな」
「それでは」
「そしてじゃが」
 信玄はさらに言った。
「夜は勘助に星を見てもらう」
「では」
 山本は頷いた、そして夜に実際にだった。
 星を見たがその動きは。
「我等のことはです」
「出ておらぬか」
「はい、ですが」
 それでもと言うのだった。
「西の青い星が」
「その星がか」
「輝きを増して」
 そしてというのだ。
「とてつもないものになろうとしています」
「そうなのか」
「はい、ですが」
「我等の星はか」
「何故か動きがありませぬ」
「何もか」
「左様です」
 こう信玄に述べた。
「これが」
「では決着はつかぬか」
「いえ」
 山本は信玄の今の言葉も否定して述べた。
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