オセロで白と黒をひっくり返していると性別までひっくり返りそうに思える話
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隼人が感心して妹を褒める。弟・日向も「スゲー」と笑っていた。
だが、当の夏葉は首を振る。
「ううん。かずのさはちょっとだけだったけど、じつりょくのさはけっこうあるとおもうよー。あっちのおにいさん、すごくつよい」
隼人の目には、妹の言う「実力差」はよくわからなかった。
が、野球でも、ほんのちょっとの差に見えて、裏に実は大きな努力差や実力差が潜んでいることはある。妹の言っていることは本当なのかもしれないと思った。
そして隼人が考えているうちに、夏葉がまた文字を打っている。
『わたしつよいおにいさんすきよ』
「お・ま・え! 変なメッセージ送ってんじゃねえよ!」
頭を掴む。だが妹はまったくへこたれない。
「あ、あっちのひと、もうやめるって。おわりのあいさつしとくね。えーっと」
また人差し指で素早くキーを叩く。
『ありがとう、つよいおにいさん。およめさんにはなってあげられないけど、げんきでね』
「だから変なメッセージ送るなって言ってるだろ!!」
「えー」
「これはさすがに訂正しないとやべーよ」
妹を強引にどかせて、隼人は自分で文字を打とうとした。
「あ、むこうログアウトしちまってる……」
間に合わなかった。
すでにsoichiro16の名前は盤面から消えていた。
『退席します。ありがとうございました』という発言だけが、チャット欄に残されていた。
* * *
翌日。
「おはよう……」
「おはよ……うわ、お前、なんかげっそりしてないか?」
朝の電車でヨロヨロと席の前にやってきた総一郎を見て、隼人はそう言葉をかけた。
「ああ……少し……体調がな……」
「大丈夫か? 席代わるぞ。ホラ」
隼人は席から立ち上がり、彼の背中に右手を回した。
体に力が入っておらず、彼の体が簡単に引き寄せられた。
一瞬ドキッとしたが、相手は体調不良。すぐに気を取り直す。
「は、隼人君……」
「どうした?」
総一郎は、顔が隼人の耳元あたりに来ている状態でしゃべった。
そのため、耳がくすぐったい。
隼人は顔も熱くなり、焦る。
「君は……どこかにお嫁に行ってしまったり……しないよな?」
そこでこのセリフである。
顔の熱は一気に引き、隼人は笑ってしまった。
「いきなり何言ってんだ? あるわけないだろ。俺、男だぞ?」
だがなぜか。隼人が突っ込みを返したその瞬間――。
フニャフニャしていた総一郎の体に、芯が入ったような気がした。
「そうか。よかった」
そんな言葉とともに、彼の手が隼人の肩にかかる。肩先ではなく、肩上部の筋肉を包み込むような、フワッとはしているが力
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