オセロで白と黒をひっくり返していると性別までひっくり返りそうに思える話
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オセロって途中の数じゃ勝敗決まんねーよ?」
「そうなのか?」
「うん。あー、マズいとこ取られた。これダメそう」
彼の形勢判断のとおり、終盤になって一気に黒が盛り返し、あっという間に盤面が真っ黒になって終了した。
「うげー。負けた」
隼人よりも長い髪の毛を両手で掻き、日向が悔しがる。
「こいつたぶんマジでつえー。兄ちゃんじゃ死んでも勝てなそう」
そう言いながら、カチャカチャとキーを叩いた。
『おめー強すぎだろwww天才かよwwwwwww』
またおかしな調子でメッセージを飛ばされ、隼人は慌てた。
「あっ。だからその口調はやめろって」
「いいだろ別に」
日向はどこ吹く風。
そしてさらに、日向とは別の高い声が、別方向から飛んでくる。
「わたしにもやらせて」
今度はTシャツ姿のショートヘア、小学四年生の妹・夏葉だ。
隼人は三人兄妹であるので、一番下が彼女である。空いていたパソコンチェアにいつのまにか座っていた。
「お前もやるのか……」
呆れる隼人をよそに、夏葉はパソコンチェアに乗ったままパソコンの前に行く。
日向とポジションをチェンジした。
「わたし『じょうせき』しってるから、いいしあいできるよー」
何やら自信満々である。
「わたしアルファベットもよめるよ。あいてはそーいちろーだね。おにいさんだ」
そう言いながら、夏葉はキーを叩く。
人差し指打ちなのに、かなり速い。
『じゃあおにいさん、もういっかいいくわよ』
変換キーを押さなかったのか、全部ひらがなで送信されている。
「だから中身変わったのバレるから、もっとうまく演技しろって……。というか、おにいさんじゃなくておじさんかもしれないだろ。勝手に相手の歳を決めつけるなって」
呆れ半分の隼人の前で、四戦目が開始された。
定石などまったく知らない隼人ではあるが、序盤に相手と妹の打ち手が噛み合っていたのは雰囲気でわかった。
そして中終盤のねじりあいも見ごたえがあった。
知っているもの同士がやっている。そんな感じだった。
「そこに置いてもすぐひっくり返されるだろ」
「うん。でもいまはそのほうがいーの」
「ん? 端っこ取れるのに、取らないのか?」
「まだそこはとらないほうがいいよー」
一見無駄に見える手。一見チャンスを逃しているように見える手。そのようなものも、実は意味があるようだ。
終盤に入っても、どちらが勝っているのかわからないまま試合が進んだ。
だが、最後の最後でわずかに白・相手が上回ったようだ。僅差で相手の勝利となった。
「夏葉、お前すごいな。もうちょっとで勝つところだったんじゃないか?」
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