暁 〜小説投稿サイト〜
だいたいチーバくんのおかげでややこしくなった話
オセロで白と黒をひっくり返していると性別までひっくり返りそうに思える話
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
 ゲーム内のチャットといえば、普通はさん付けだ。初対面で君付けする人は見たことがない。

(君付けといえば……。いや、まあ、ありえないんだろうけど)

 また彼の顔がチラつくが、すぐに打ち消した。
 とりあえずこちらも挨拶を、ということで、隼人は両手の人差し指だけでキーボードを叩く。

(えーっと。よろしく、総一郎……って、やべ、変換しちまった。しかもこの漢字、あいつと同じじゃねーか)

 このまま送るわけにはいかないので、直そうとした。
 だがバックスペースキーを押したつもりが、エンターキーを押してしまった。
 無情にも送信されてしまう。

『よろしく、総一郎』

 隼人は自分のパソコンを持っていない関係で、キーボード入力はずいぶん前に学校の授業で少しやった程度。慣れていないがゆえのミスだった。
 しかも名前に「さん」も付けていない状態で送信されてしまった。大失敗だ。
 だが、アチャーと隼人が思ったのとほぼ同時に――。

『誤って君付けしてしまいました。申しわk』

 と、相手からも中途半端なメッセージが来た。
 タイミングが早すぎるので、こちらのミスメッセージを見てから打ったものでないことは明らかだ。
 隼人がメッセージを送ったときにはすでに打ち途中だったものを、ミスして送ってしまった……そんな感じだった。

(こっちが変な返し方をしちまったからびっくりして、間違えてエンターキー押しちゃったのかな?)

 隼人はそう思いながら、とりあえずこちらも一言謝罪をと思い、またキーボード入力をしようとした。
 が、いかんせんタイプが遅い。途中で相手が一手目を打ってしまった。
 対戦開始だ。

 訂正と謝罪のタイミングを逃した隼人は、打ち途中のメッセージを消し、仕方なくそのまま対戦を進めた。

(あ、隅取られた)

 さっそく隅を取られた。

(あ、また取られた)

 次は自分が、と思っていたが、二箇所目の隅もあっさり取られてしまった。
 さらに相手の猛攻は続く。

(こいつ……強すぎないか?)

 最終的に四隅を全部取られ、あっという間に大惨敗となった。画面は黒石だらけで真っ黒に染まった。
 こちらは考慮時間を制限ギリギリまで使い切ったが、相手はほとんど使っていない。それでこの差である。

(もう一回頼んでみよっと)

 一回だけではまぐれという可能性もある。そう思った隼人は、再戦を申し込もうとした。
 相手が離れる前に申し込まないといけない。スピード勝負だ。

(えっと、「もう一回やらないか」、と送らないと……。もう一階……いや一階ってなんだよ。一回だよ……一介……なんだこのパソコン、変換壊れてんの?)

 焦る。
 バックスペースキーで誤変換の「一介」
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ