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戦国異伝供書
第五十九話 死地へその五

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「やはりです」
「長尾殿の軍勢であるな」
「まさに」
「そうであるな」
「それで具体的な動きですが」
 山本は信玄にさらに話した。
「まず本陣はこちらに置いたままにします」
「わしはか」
「左様です、お館様が残られますが」
 それでもというのだ。
「別に動く軍勢を分け」
「その者達をじゃな」
「はい、姿と音を隠して」
「そうして進ませてか」
「妻女山の後ろから攻めさせて」
 そしてというのだ。
「山にいる長尾殿の軍勢を驚かせて」
「後ろからの不意打ちで、であるな」
「それで本陣の軍勢の前に出ますが」
「そこをじゃな」
「攻めるのです」
「わし自ら軍を率いてか」
「長尾殿と雌雄を決する」
 山本は信玄にここではこれまで以上に真剣な顔と声で話した。
「そうした時になります」
「左様か」
「この策は如何でしょうか」
「それでよい」
 信玄は一言で答えた。
「他によい策があれば他の者に聞きたいが」
「これでよいかと」
「実によい策と思いまする」
「流石山本殿です」
「この策なら長尾殿を破れましょう」
「他にはないかと」
 他の将帥達も異論がなかった、それでだった。
 信玄はあらためてだった、山本に告げた。
「その策でいく」
「有り難きお言葉。さすれば」
 山本もここで笑顔になった、こうしてだった。
 武田軍はこの策を上杉軍に仕掛けることにした、それで次は諸将も交えてどれだけの軍勢とどの者をどちらの軍勢に加えるかの話をした。
 ここでだ、信玄は高坂に言った。
「源助、お主がじゃ」
「それがしがですか」
「そうじゃ、攻める軍勢の大将となれ」
 こう命じるのだった。
「よいな」
「それがしがですか」
「こうした時は軍勢を静かにかつ素早く動かせる者が大将であるべきじゃが」
 その者はというのだ。
「お主じゃ」
「そう思われるからですか」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「お主にじゃ」
「任せて下さいますか」
「頼むぞ」
「それでは」
 高坂も頷いた、こうして彼が妻女山を攻める軍勢の大将になることが決められた。そうしてさらにだった。
 信玄は信繁にはこう言った。
「お主はここにじゃ」
「残ってですか」
「戦ってもらう」
 こう言うのだった。
「よいな」
「わかり申した」
「そしてお主もじゃ」
 今度は山本に言うのだった。
「わしの傍にいてじゃ」
「そのうえで」
「何かあればな」 
 その時はというのだ。
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