第五十九話 死地へその四
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「動いた者は厳しく罰するぞ」
「さすれば」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「守る、山から下りてきても距離もあるし」
「それにですな」
「さらに川もありますな」
「さすればです」
「長尾殿とても」
「攻めて来ぬ、だから動かぬことじゃ」
今はというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
家臣達も頷いて誰もが守りを固めたうえで静観した、そうして上杉軍は堂々と川を渡ってだった。
そのうえで妻女山に入ってそこで布陣した、山本はその彼等を見てそのうえでこんなことを言った。
「これからじゃ」
「どう戦うかですか」
「うむ、それがな」
傍らにいる幸村に話した。
「大事となるが」
「山本殿はどうお考えでしょうか」
「どの様にして攻めるかか」
「あの山にいる上杉の軍勢を」
「既にある程度考えておる」
これが山本の返事だった。
「それで今からな」
「お館様にですか」
「申し上げる」
自身の策をというのだ。
「そうする」
「左様ですか」
「だからな」
「これよりですな」
「お館様の御前に参上する」
「さすればそれがしも」
「うむ、来てくれ」
山本は幸村に確かな声で応えた、それで二人で信玄の前に参上すると信玄はすぐに山本に笑顔で言ってきた。
「策を持って来たか」
「おわかりでありますか」
「顔に出ておる」
「それがしのですか」
「源次郎の顔にじゃ」
幸村の、というのだ。
「出ておるわ」
「それがしのですか」
「お主はもう少し隠すことを覚えよ」
信玄は自分の言葉に驚く幸村に優しい笑顔で述べた。
「嘘を吐かぬことは美徳であるがな」
「隠すことはですか」
「それも知略のうちであるからな」
「隠すことですか」
「うむ、そのことを覚えるのじゃ」
「わかり申した」
「それでじゃ」
信玄は幸村が自分の言葉に納得して頷くのを見届けてから山本にあらためて顔を向けてそのうえで言った。
「お主の策であるが」
「はい、そのことですが」
山本は晴信に応えて述べた。
「啄木鳥です」
「啄木鳥とな」
「はい、この度は啄木鳥の攻め方でいきましょう」
「啄木鳥となると」
この鳥の名を聞いてだ、信玄は座したまま考える顔になってあらためて言った。
「木の一報を嘴で叩くな」
「はい、そうして木の中にいる虫を驚かせますな」
「そして一方に回り込んでじゃ」
「そちらに逃れてきた虫を捕えて喰いますが」
「それをするのじゃな」
「この場合虫とは」
山本はそちらのことも話した。
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