153章 映画『クラッシュビート・心の約束』、大ヒットする
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すか?」
記者の杉田美有は、テーブルの真向かいにいる、優斗にそう聞いた。
「あれはですね。ぼくって、実際に、学校でも、みんなになかなか、
打ち解けられないっていうか、みんなとワイワイ騒いだり、盛り上がったりできない、
そんな内向的な一面があったんですよ。実際にちょっといじめの対象になったって、
感じた時期もあったし。いまは全然違いますけどね。あっはっはは」
「そうだったんですね。優斗くんは、繊細でナイーブなところが魅力的ですしね!」
「あ、ありがとうございます!そうなんですよ、ぼくって、変なところに気を使ったりして、
ナイーブなんですよ、ひとりで遊ぶのが好きだったりして。
いまじゃ、この映画に出たせいで、何事にも積極的というか、アクティブというか、
ずいぶんと変わっちゃいましたけどね。あっははは」
そう言って笑う、優斗の表情や目の輝きは、スターが持つオーラそのものだ。
「えーと、では、次のお話に移りますけど、今回の物語の最後は、
みなさん、合唱団で、美しいハーモニーで、楽しく歌っていても、
うまく歌えないで、合唱をやめようとする子どもたちもいたりしたじゃないですか。
でも、そこで、美しく歌うことよりも、自由に楽しく歌うことのほういが大切だって、
みんなで考えたりして、その結果、脱落しそうになる子どもたちも、
みんな帰ってきて、みんな笑顔の、大合唱団になっちゃうわけじゃないですか。
あのラストは圧巻というか、感動で、私は泣きっぱなしでした!」
と言って、記者の杉田美有は、ちょっとまた目を潤ませる。
「まあ、世の中って、美しいことも、楽しいし、大切だけれど、
それよりも、自由が大切だってことですよね。
どんな理屈や論理や価値観よりも、個人の自由が尊重されるべきなんですよ。
たとえば、どんなに世の中に通用しているシステムがあるとしても、
個人の自由は尊重されるべきなんですよ。
村上春樹さんも、エルサレム賞受賞式典スピーチの『卵と壁』 では、
小説を書く理由は、たった1つしかないと言って、
それは個が持つ魂の尊厳を表に引き上げ、そこに
光を当てることで、小説における物語の目的は、警鐘を鳴らすことだ、
って言ってますもんね。
日本民芸館を設立した思想家の柳宗悦は、
『美の法門』という著作で、『自由になることなくして、真の美しさはない』
って言ってますよね」
川口信也が、笑顔で、テーブルのみんなをゆっくり見ながらそう言った。
「わたしも先生役ですけど、撮影中も、子どもたちからは、学ぶことばかりなんです。
ホント、子どもたちって、自由そのものなんですから・・・」
子どもたちの合唱の先生役の沢口貴奈がそう言
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