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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
幕間 とある勅任特務魔導官の一日
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す、ただ皆、疲労が出てきています。
守原よりも動向を掴むのに労力がかかりましたから何しろ宮野木の老公は厄介ですからね、この様な時は駒州公よりもやり辛いかもしれません」
自身も疲労を自覚しているのか部長もうんざりしたように頷く。
「あの老人は根っからの反駒城だ、大体の行動は予想がつく。具体的な確証を掴めれば良いが」
 部長は最近白髪が目立ち始めた頭を手で梳きながらぼやく。
「あの家は権謀で五将家に居るようなモノですからね。現在の背州公はやり過ぎですが。」
 羽鳥も溜息をつく。
 ――守原も宮野木も北領が落とされても未だ政争に夢中。この国の陸軍はまともな戦略をとれるのか不安になる。
 内情の憂いを脳裏から追い出し、自身の職場――少なくとも当面は――を出た。


同日 午後第一刻 皇都内 割烹屋 星岡亭  


 皇都でも古参の料理屋に入り、少し外れた席に座る。
「よう、時間通りだな。」
 羽鳥が親しげに声をかける。
「今は暇だからな。貴様は随分忙しいだろうが」
 一見、筋者の様にもみえる小柄だが、がっしりとした体躯の先客が答える。
「もう間もなく貴様の抱えた面倒も一区切りがつく、時間を割くのもやぶさかではないさ。
それにしても、貴様、休暇はとうに終わっているのに良いのか?」
「大隊長殿が怠けているから大隊長の代行で大隊の面倒を見ているだけだ。
だが、それももう終わりだ。奴がもうまもなく帰ってくる以上、独立捜索剣虎兵第十一大隊はもう俺達の手を離れるだろうな」
 その男――新城直衛――が答える。現在、最も名が知れ渡っている部隊である独立捜索剣虎兵第十一大隊、その大隊長代行である彼と羽鳥は、陸軍幼年学校の同期であり、同じ班員として(半強制的に)親交を深めた仲であり、新城直衛の数少ない友人だと言える。

「馬堂豊久大隊長殿、か。厄介な奴が英雄になったものだ」
 出てきた料理をつつきながらうんざりした様子を隠そうともしない羽鳥に新城は唇を歪めて答える。
「厄介なのは否定しないがな、俺は悪くは言わないよ。奴には貸しも借りも数えるのが面倒な程ある。何しろ餓鬼の時分からの付き合いだ」
 
「しかし、貴様も奴の代行で派手に恨みを買ったな。
俺も彼方此方に火事の匂いをかぎ回る羽目になって酒どころか本もおちおち読めん」

「俺も目立たない様にしているつもりだったのだが。
昔から他人に関わらぬ様にしていた、煩い奴は一人で間に合っているからな」
 ――だがそれもこの三ヶ月で台無しだ。
ぼやきながら新城は茶をすするが羽鳥はそれを鼻で笑う。。
「今までだってお前は十二分に悪目立ちしていたろうが。
貴様が期待するよりも、馬鹿は少ないのさ」

「何が言いたい。」
 答える声は何処かわざとらしさを感じさせる。
「それ
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