第一部北領戦役
幕間 とある勅任特務魔導官の一日
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で減じた導術士の再興の為に名目上はとして(当時の人間達も未来視など信じていないが)占師としての導術利用を掲げ、五将家の承認を受けることで皇室魔導院が創立されたのであった。
そして五将家の支配が確立され、導術が一般的な生活に浸透する事で滅魔亡導の再来の危険が笑い話となり、導術士の数も往時と遜色が無くなると魔導院は皇紀五三七年に養成機関として魔導師範学校を再建し、天領の導術通信の管理、導術利用の研究を任務とする事を皇主へと献策した。
天領は経済の自由化に伴い富と情報が流れ込む場所へと変貌しつつあり、その土地の導術通信を管理する事は皇室魔導院の実態を変化させていった。当時、五将家による支配への反発は未だに根強く、魔導院は内乱の芽を摘む事を口実に国内外の導術通信を監視し始めた。これは実際に有効である事から、五将家も認めざるを得なかったが――それを認めたのは失策だったと先代の護州公である守原時康は後に残された私書の中で述懐している。
魔導院が監視している通信の真偽の調査の為に導術士ではない諜報員を使い始めたのだ。
形式上、彼等も導術士とされ、“勅任特務魔導官”と名付けられた。そして必要性に応じ、やがて導術士と特務魔導官の数は逆転し、皇室魔導院は〈皇国〉最大の諜報機関となった。
そして限定的とは言え警察権を握った際には、五将家は反対した。すでに交易を通して国際政治が急速に重要視される中で〈皇国〉執政府が諜報機関持つの必要性は認めていたがそれを支配できない事はいたく気に入らなかったからだ。
だが、既に万民輔弼宣旨書の発布を控えており、執政府は彼らの手を離れ五将家はかつてのような独裁的な政治力は失いつつあった。
そしてそれ故に、五将家は子飼いの僅かな導術士を覗き、導術を信用することはできなくなった。
兵科としての導術兵も魔導院の手勢が入る事を恐れ、導入が遅々として進まない事は上層部の間では広く知られている。
閑話休題
同日午前第十三刻 皇室魔導院 特務局内国第三部
羽鳥守人の職場である皇室魔導院内国第三部は主に将家の監視を担当している。その為、この何処か教員室の様な並んだ机に座る者は少なく、大半は皇都を含め、各地に散らばって居た。
だが、現在は北領失陥を受け、各地の鎮台が軍への再編の準備を行い、五将家の要人は皇都で政争を激化させている為、人員もそれに従い皇都に集まっている。
更に言うと人員以上に仕事も増え、書類仕事も増えている、情報を扱う場とはそうした所なのである。
羽鳥もその法則に従って昨夜の捜索報告書類をようやく提出し、疲労に凝り固まった肩を回しながら部長室を出ようとしていたが、そこに部長が声を投げ掛けた。
「あぁ、今日行う、宮野木と安東の件の調査はどうだね?」
「準備は万端で
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