第五十八話 出家その七
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「それがじゃ」
「この世を為す五つのうちの一つになっていますな」
「そしてじゃ」
「長尾殿は水ですな」
「そうなっておる、火と水は確かに相反するが」
それでもというのだ。
「共にじゃ」
「この世にですな」
「必要でじゃ」
それでというのだ。
「わしはそうしたことからもじゃ」
「長尾殿をですか」
「欲しいと思っておる」
自身の家臣にというのだ。
「何があろうともな」
「お館様が天下人になられ」
「そしてじゃ」
「戦にですな」
「政にじゃ」
その両方でというのだ。
「力を貸してもらいたい」
「若しです」
板垣も言ってきた。
「お館様の両脇に長尾殿と」
「織田殿じゃな」
「お二方がおられれば」
「お主も織田殿のことがわかってきたな」
「瞬く間に尾張を一つにされ」
そしてとだ、板垣は信玄に答えた。
「その政もです」
「見事であるな」
「あそこまでの政が出来るとなると」
「わしかじゃな」
「北条殿か毛利殿か」
「数える位じゃな」
「そこまでの方かと」
信長、彼はというのだ。
「ですから」
「わしのもう一人の片腕にじゃな」
「そうなれば」
その時はというのだ。
「お館様は天下人となられ」
「そうしてじゃな」
「その天下もです」
これもというのだ。
「盤石のものとです」
「そうであるな、だからな」
「織田殿もですな」
「わしの片腕にしたい」
謙信と並んでというのだ。
そしてだ、信玄は笑ってこうも言った。
「しかも見栄えもよいわ」
「見栄え?」
「見栄えといいますと」
「だからじゃ、赤と黒と青の三つの色が揃う」
織田家の色である青も入れての言葉だった。
「目立つ、しかも長尾殿の顔立ちはじゃ」
「ううむ、整っておられますな」
「まるでおなごの様です」
「色白で目鼻立ちもよく」
「実によいお顔立ちですな」
「そして織田殿もじゃ」
信長もというのだ。
「その顔を実際に見たことはないが」
「それでもですな」
「あの御仁もですな」
「噂によれば」
「随分と」
「顔立ちが整っておるという」
だからだというのだ。
「その者達がわしの両脇におるとじゃ」
「見栄えもいい」
「そう言われるのですな」
「その様に」
「そうじゃ、とはいってもこれは洒落じゃ」
それに過ぎないというのだ。
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