三・五章 あなたは生き残りのドラゴンの息子に嘘をついた
第40話 帰ってきました
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だ。
その後、シドウが生まれる少し前に整備し直され、現在は馬車が通れるほどの幅広な道になっている。
その入り口に、灰色の塊が見えた。まだ距離が遠いが、大きいというのはわかる。
「あそこで降りよう」
嫌な予感がしたシドウは、背中のティアにそう言った。
予感は的中した。
「兄さん!」
着陸する前から焦げたような臭いを感知していたシドウは、変身したまま駆け寄った。
横向きに倒れていた灰色の巨体。それはドラゴンであり、シドウの兄のうちの一人であったのだ。動きはまったくない。
呼吸を確認し、全身を確認した。
そしてティアに向かって一つうなずく。
「意識はないけど生きてる。火で焼かれたみたいだ。まだそんなに時間は経ってない」
シドウの兄の体の腹部側からは、わずかに煙があがっていた。腹板は色素が薄めのはずだが、焦がされて黒ずんでいる。
「シドウのお兄さんだったんだ……」
ティアはドラゴンの腹部側に回り、回復魔法をかけはじめた。
すると、腹板が本来の色であろう薄灰色に戻っていく。
「うん。たぶん治った。意識は戻ってないけど、じきに目が覚めると思うよ」
「ありがとうティア。でも、いったい誰がこんなことを」
周りの木々はまったく燃えておらず、山火事があったわけではない。自然の火ではなく、誰かに焼かれたというのはほぼ確実だ。
シドウは首を少し持ち上げた。
「少し先にも焦げた臭いがする」
ドラゴン態では鼻が利く。同じ臭いを感じ取ったシドウは、先を急いだ。
少し登ったあたりで、ふたたびシドウの兄弟を発見することとなった。
今度は六匹まとめて。そして全員が焼かれて倒れた姿で。
広い登山道が、倒れたドラゴンで完全に塞がっていた。だがやはり周囲の木々が焼けた様子はない。
慌てて回復魔法をかけて回るティア。
シドウは呆然とそれを見守った。
「父さんや母さんが心配だ。すぐ見に行こう」
久々に戻ってきた故郷でのまさかの事態。シドウはティアを乗せ、飛び立った。
山の頂上近く。
斜面に空いている、横穴。
かつてドラゴン族の巣があったところである。
現在は、純血ドラゴン最後の生き残りであるデュラと、その夫である人間ソラト、そして二人の間にできた子どもたちが住む家となっていた。
穴の入り口の周囲は岩ばっていて土壌に乏しいため、草は丈の低いものが薄く生えている程度。大きな広場のようになっている。
そこにたどり着いたシドウとティアが見たものは――。
「え? シドウ、あれって」
「……!」
穴の入り口の前で、長い首をやや立てて、静かに佇むドラゴン。
シドウの母、デュ
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