三・五章 あなたは生き残りのドラゴンの息子に嘘をついた
第40話 帰ってきました
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ているところもあれば、朽ちているであろう建物がたくさん見えるところもある。
「ほんとだー。この高さだとわかりやすいね」
シドウは高度を上げることなく、そのまま低空を飛び続けた。
すると、町の跡や畑の跡というにはあまりにも大きい、しかも森との境界線が歪な禿げ上がりがあった。
「あれ? このあたりはハゲすぎのような気がするけど?」
「森を焼いてその灰をそのまま肥料にする焼畑農業っていうのを昔からやっているんだけど、そのときに失敗して大火事になったんだ。俺の師匠がうるさく言ったみたいで、今はそういうミスは少なくなったって聞いているけど」
「へー。でもこんなにハゲたままっておかしくない? このへんって年中暑いし雨も多いんでしょ?」
特に町としても畑としても使わなかったのであれば、裸地はすぐ森に戻るはずでは? ティアの指摘はそういうことなのだろうが、シドウは小さく首を振った。
「おかしくないよ。熱帯の土って薄くて痩せているから」
「はーい、わけわかりません。全然逆のイメージだけど?」
「簡単に言うと、土壌が薄いのは落ち葉の分解が速すぎるからだね。痩せているのは、暑くて水分が多いせいで、無理矢理生長させられた植物が土から栄養を奪っているから、かな」
「へー」
「それに、このあたりの土はラテライトって言う赤土で、いったん干からびるとカチカチに固まる。森を一度裸にして放置してしまうと、元に戻すのは大変だろうと思う」
「南の森って強い印象だったのに、違うのかあ」
「師匠は『熱帯の森には人間がまだ知らないすごい力と役割があるだろう』って言ってたから、強いというのは間違っていないと思うけど」
「じゃあ、強いけど弱いのね」
「よくわからない言い方だけど……まあ、そうなんじゃないかな」
ティアの独特の表現に首を傾げながら、同意はした。
「でも無理矢理生長させられてるって、なんか怖くない?」
「怖いって言われても事実だし。このあたりの木に年輪なんてないよ。冬も生長させられるから」
「怖っ」
シドウはペザルの上空に到着すると、山にはまっすぐ向かわず、町の上空をぐるりと大きく回った。
この町では、空にドラゴンを見かけて驚く者はいない。
大陸最南端の田舎でありながら、他の町に決して劣らぬ活気の大通り。
シドウの両親が一緒にそこから船に乗ったこともあるという、漁船や商船で賑わう港。
本当はもう少しゆっくりティアに町を見せたかった。が、空に雲が急速に増えてきており、天気が崩れる兆候があった。シドウは一周回り終えると、低空飛行のまま、生まれ故郷の山の麓へと向かった。
「あれ? シドウ、何か見えるけど」
登山道。勇者一行がかつてドラゴンの巣を全滅させた後に作られたもの
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