三・五章 あなたは生き残りのドラゴンの息子に嘘をついた
第40話 帰ってきました
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シドウとティアの二人は、空を飛んでいた。
シドウはドラゴン姿で。ティアはその背中に乗って。
飛行はなめらかで、安定していた。
高度はそこそこ取っているが、だいぶ南に来ていることもあり、二人に当たる風は冷たくはない。
行き先は大陸の南端。港町ペザルの近くにある山――シドウの故郷――である。
目的は、旧魔王城に行く予定であることをシドウの両親に伝えるためだ。
「シドウのお母さんって、空の飛び方も教えてくれたの?」
「それは誰にも教わってないよ。いつのまにか飛べるようになってた」
「そういうもんなんだ」
「うん。鳥や虫が飛べるのと一緒だと思う」
「ふーん」
ダラム王国を飛び立ってから、ティアはシドウの両親のことをしきりに聞いてきた。すでに知っているであろうことも質問してきた。
『冒険者同士は詮索禁止』という暗黙のルールはあるが、当然ティアはそれを承知のうえで聞いているのだろうと思われた。
彼女はこれからシドウの両親に初めて会うことになる。あえて秘密にする理由もないため、シドウは丁寧に答えていた。
母親のデュラが、かつて魔王軍に協力していたドラゴン族の族長の娘であること。大魔王が勇者一行に倒されたあとにドラゴン族も討伐の対象となったが、デュラだけ討ち漏らされて生き残っていたということ。
父親であるソラト・グレースが、ペザルで生まれた人間であること。大魔王が討伐されて平和な世になってから冒険者になったこと。仕事でペザルの近くの山に入ったら、ドラゴンの巣の跡でデュラと偶然出会ったこと。
その後あらためて山に来た勇者一行によって、デュラが討伐されかけたこと。しかしソラトの必死の懇願が実って助命となったこと。それがきっかけで二人は結ばれ、シドウも含めて八人の子ができたこと。デュラはペザルの町の人間たちから『山神様』とされ、町の代表団が定期的に挨拶に来ているということ。
気づけば、両親の半生を一通り彼女に伝え終えていた。
眼下の景色のほうは、ここまで順調に変化してきている。
ダラムの南に広がっていたのは、濃い緑色の照葉樹林。
さらに南には、淡い緑色の草原地帯。
それ越えると、高い樹冠の熱帯林。
そして今はところどころ森が開けており、裸地や草原になっているところが増えてきていた。
いよいよシドウの故郷、ぺザルが近づいてきている。
「このへんの森がハゲているところって、畑とか集落とかかな?」
「いや、畑や集落だった≠ニころのほうが多いと思うよ」
シドウは高度を地面ギリギリまで落とした。背中のティアが腑に落ちていないことを感じ取ったためだ。
森が禿げている部分がよく見えた。
いずれも形状はきれいな円形または方形。ほぼ完全な裸地になっ
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