第九話〜予兆〜
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めたのだろう。穏は感嘆の声を上げる。
「江様は敵の兵糧庫を襲撃しようと思ってるんですね〜」
「そうか!無理やりにでも兵糧を燃やしてしまえば、向こうに打って出る以外の選択肢はない…」
次々に将たちは納得の表情を浮かべる。
「宛城の見取り図から分かる通り、兵糧庫は南西の外れに位置し、更に恐らくは敵兵の宿舎であろうこの建物の死角に位置しています」
江の口から淀みなく流れ出る言葉に将たちは心底感嘆していた。しかしここで横槍が入る。
「でもそれで兵糧庫を襲撃するのよね?そのあとはどうするのよ」
桃蓮が長子・雪蓮である。
雪蓮はただ疑問に思ったことを口にしただけなのだが、気分の乗ってきた周りの将からは「少々」冷たい視線を向けられる。
「それに関しても考えていますよ」
そう言って江は、今一度見取り図に手を置く。
そして指さすのは宛城の中の北に位置する少しばかり小さめの建物。
「ここが恐らくは敵総帥が居座っている場所です」
「その心は?」
「北方には崖、東西には兵舎がある。まるでこの建物を守っているようではありませんか?」
江の問いかけに、祭は無言で同意を示す。
「そこで私の考える方針はこうです。まずは凌操殿、雪蓮で南門に攻撃を仕掛け、思春率いる諜報部隊が城内北西の家屋に火をかけます。そしてそちらに敵兵の意識が集中しているすきに、今度は明命が率いる部隊で兵糧庫を強襲、燃やし尽くします」
「して、その次は?」
「当然敵兵の意識は兵糧庫へと移ります。今度は思春の部隊で城門を開放、南門前の凌操殿たちには、城内侵入後、混乱する敵兵を更に混乱させ、東門、西門から外に誘導していただきます」
「そうやって朱儁や袁術に雑兵の始末を押し付けるのじゃな」
「後は我々の総兵力を以て、趙弘がいるであろうこの建物を襲撃。首級を上げれば…」
それ以上のことを江は口にしなかった。
そして再び周囲を沈黙が支配する。皆桃蓮の言葉を待っているのだ。
「一つ聞こう。江よ、この策の本当の狙いは何だ?」
「さて、何のことでしょうか?」
「とぼけなくていい。東門や西門から敵兵を追い出すことは分かった。それを袁術、朱儁に押し付けることもな。だがこの地に討伐軍は四勢力いる」
江の作戦のなかで終ぞその名前が出なかった勢力。
「四つのうち三つの勢力は大小の差はあれど功を上げた。そのような状況下で『不運』にも何の手柄も立てられなかった勢力の長は果たしてどう感じるでしょうかね…」
「ククッ、気に入った。実に心地よい計略だ」
その顔に笑みを湛え、桃蓮はゆっくりと立ち上がる。そして並みいる武将の顔を一つ一つ見つ
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